IPEの検証

本日は会計監査の話になります。

IPEとは

IPEという言葉は皆様ご存知でしょうか。
Information Provided by Entity(IPE)の略称で、直訳すると企業が作成した情報、ということです。
監査の過程で企業から入手した情報が正しく、網羅的なものであるかどうか、確認しましょうということです。

少し前から、日本の会計監査でこのIPEの検証をしっかりやっていきましょうという風潮になっています。

では何を検証すれば良いか。
ざっくり言ってしまうと、資料の網羅性と正確性を確かめましょう、ということです。

IPE検証の例

例えば、ある勘定科目の増減分析のために、補助科目残高一覧表を企業から入手したとします。
この場合、入手した補助科目残高一覧表をそのまま使用して増減分析するのではなく、まずその補助科目残高一覧表の網羅性、正確性を検討しなければならないのです。
網羅性の観点でいうと、補助科目残高一覧表の合計残高が、試算表の科目残高と一致しているかを確認する手続きが挙げられます。
正確性の観点でいうと、勘定科目に対するサンプルテストなどで請求書等を確認するときに、取引先別に補助科目が適切に登録されているかをテストするような手続きが挙げられます。
そして、補助科目残高一覧表の網羅性、正確性が検討でき、信頼できる資料であることが検証できて初めて、当該資料に基づいて増減分析の手続きを行うことができるのです。

上記の例でいうと、従来の勘定科目の統制テストや実証手続きで既に実施している内容も多いかと思います。
その場合は、当該手続きを参照して、IPEの検証を行っている旨を文書化すればそれでOKです。

問題なのは、このように各手続きで使用している会社から入手した資料(IPE)の検討を行った結果、網羅性、正確性の検証が出来ていない資料が出てきた場合です。
この場合は、追加でIPE検証のための手続きを計画、実行しなければなりません。
従来の監査では、IPE検証をなあなあにやっていた部分もあると思いますが、今後は検証をしっかり行わなければなりません。
ITシステムから出力されている帳票の場合には、IT専門家の協力も不可欠になるでしょう。

IPE検証の実情

IPE検証は、既に海外の会計監査ではメジャーな概念です。
そして、日本でも後追いしてIPE検証をしっかり行おうというのが流れです。

しかし、海外と日本では状況が違います。
海外(特に欧米系)の企業は、内部統制に対する意識が非常に強いです。
IPEの検証も企業側が主体的に行い、監査人は会社の検証結果の確認という作業するかたちです。

日本でも建て付けは同じなのですが、私が監査現場にいた実感としても、日本の多くの上場企業は内部統制に対する意識が弱いことが多い印象です。
そのような状況下で、企業にIPEの検証まで求めるというのはなかなか難しいです。
実態としては、企業の代わりにIPEの検証方法を組み立てたり、企業側が理解しないままとりあえず資料を依頼して監査人側で検証していることが多かった印象です。

会計監査のメッカはイギリスやアメリカなのでしょうがない気持ちもあるのですが、海外の考えをそのまま日本に取り入れても、なかなか現場が回らないな、というのが率直な印象です。

まとめ

中小監査法人や個人事務所でもIPEの検証はメジャーになってきたと思います。
そもそもIPEの概念を理解し、監査上入手した資料に対しては、その網羅性、正確性を担保するための手続きを組み立てましょう。

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