贈与税とは?仕組みや計算方法を解説!

将来のために親が子どもへ、祖父母が孫へ、財産を生前に渡したいと考えることも多いかと思います。
「個人」が「個人」へ財産を無償であげることを「贈与(ぞうよ)」といいます。

「贈与」に対しては「贈与税」が課税されます。
そこでよくご質問があるのが、贈与税は一体誰が払うのか、いつまでに申告するのか、どのようなものが贈与になるのか、といったことです。

そこで今回は、贈与税の仕組みや計算方法、注意点などを解説していきます。

贈与税とは

「個人」が「個人」に対して無償で財産をあげることを、「贈与(ぞうよ)」といいます。

財産をあげる人を「贈与者(ぞうよしゃ)」、財産をもらう人を「受贈者(じゅぞうしゃ)」といったりします。

この贈与が行われたときに、「受贈者」に対して課税されるのが「贈与税」です。

財産をあげる人(贈与者)ではなく、もらった人(受贈者)に対して税金がかかるという点に注意してください。

贈与税は、「贈与者」、「受贈者」が親族であるか、他人であるかを問わずに課税されます。

親族に財産をあげるからといって、贈与税がかからないということはないので注意してください。

むしろ、親族間のお金のやり取りに対して贈与税が課税されるというのが大半のケースです。

 

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に贈与を「受けた」財産の金額に応じて課税されます。

1年間にいくら「あげた」か、ではなく、いくら「もらった」かどうかです。

そして、受贈者がその年の翌年3月15日までに贈与税の確定申告を行って、納税も行います。

あくまで納税を行うのは受贈者です。

受贈者ではなく、贈与者が代わりに贈与税を支払ってしまうと、その贈与税の金額も贈与者から受贈者への贈与として取り扱われてしまいます。

よくあるのが、孫に預金を贈与したが孫に贈与税を支払うお金はないので、祖父母が代わりに贈与税を支払っている、というケースです。

このケースでは、祖父母から孫へ、贈与税相当額の贈与が行われたとして、さらに追加で贈与税を納める必要があります。贈与税は、孫(受贈者)にあげた預金の中から支払ってもらうようにしましょう。

贈与税の仕組みと計算方法

贈与税の計算方法には、大きく分けて2つの方法があります。

「暦年贈与」と「相続時精算課税」という2つの制度です。

以下の表でそれぞれの制度の特徴を比較してみました。

なお、令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以降の贈与については、暦年贈与と相続時精算課税の制度が大きく改変されることになりました。

その影響も表中に反映しております。

 

暦年贈与 相続時精算課税
非課税枠 年間110万円 累計2,500万円

(令和6年1月1日以降の贈与から110万円の基礎控除新設)

適用要件 特になし 原則60歳以上の父母・祖父母から18歳以上のこども孫への贈与のみが対象
非課税枠を超えた金額に対する税率 10%~55% 20%
相続税計算時の加算対象

(非課税枠以下の贈与でも加算)

相続開始前3年以内の贈与

(令和6年1月1日以降の贈与から7年以内)

相続時精算課税適用時からの全ての贈与

(令和6年1月1日以降の贈与から、110万円以下の贈与は加算不要)

留意点 特になし 1度相続時精算課税を選択したら、暦年贈与には戻れない

 

贈与税は基本的に、「1年間に贈与を受けた財産の金額」×「贈与税率」で計算されます。
その他非課税枠等の各項目の詳細な解説については、非常にボリューミーになってしまうので以下の記事で別途解説しております。ご参照いただけますと幸いです。

生前対策とは?どんなメリットがあるの?

贈与税の非課税財産

日常生活では、お祝いや冠婚葬祭などで個人からお金を頂くこともあるでしょう。

では、こういったかたちでもらったお金も全て贈与税がかかるかというと、そうではありません。

以下に贈与税が課税されない代表的な財産をご紹介いたします。

夫婦や親子、兄弟姉妹などから生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

通常の生活費として、夫婦でお金を融通し合ったり、親や兄弟から仕送りを送ってもらうこともあるかと思います。

これらのお金のやり取りに対しては贈与税は課税されません。

ただし、あくまで生活費として通常必要な範囲の金額に限られますので、不動産投資や自分の蓄財のためにお金をもらったというのであれば、贈与税が課税されます。

個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの

香典やお祝いなどでお金をもらっても、基本的に贈与税は課税されません。

ただし、あまりないケースだとは思いますが、例えば香典で1,000万円を渡すなど、社会通念上相当でない金額の場合には贈与税が課税されます。

法人からの贈与により取得した財産

贈与税はあくまで、「個人」から「個人」に財産が贈与された場合の税金です。

「法人」から財産の贈与を受けても贈与税はかかりません。ただしその代わり、「法人」からの贈与に対しては、受贈者に対して所得税(一時所得)が課税されます。

そもそも贈与が成立していないと贈与税は課税されない

税務上、贈与として認められるためには、贈与という行為が法律的に成立している必要があります。

例えば、孫の名義の定期預金口座に単にお金を振り込んでも、贈与契約書の作成がなかったり、孫が贈与を受けた認識がなければ、贈与ではないと判定されます。

そうすると、生前贈与で相続財産を減らせたと思っていても、税務調査で贈与の事実が否認されて、孫に対する「預け金」として相続財産に含めて課税されてしまいます。

これを、名義だけ動かして、実際に贈与が成立していない財産として、「名義財産」といったりもします。

贈与が成立しているかどうかは、税法だけではなく民法の知識も重要になってきます。

そして、これをしたから必ず贈与になる、ならない、といった判断基準はなく、税務調査でもよく問題になります。

第三者から見ても贈与であることを認めさせるために、契約書の作成、財産の移動状況を示す書類の保管、贈与税の申告などの準備が重要になってきます。

一見贈与に見えない取引も贈与税が課税される(みなし贈与)

何かしらの財産を無償であげているわけでもないのに、税務上は贈与とみなされて、贈与税が課税されてしまうことがあります。

これを「みなし贈与」課税といったりします。以下のようなケースで、みなし贈与課税が行われる可能性があります。

  • 個人から著しく低い価額で不動産などの財産を購入したとき
  • 自分が保険料を負担していない保険で、保険金を受け取ったとき
  • 法人が債務免除を受けたり、自己株式の取得を行った場合に、それに伴って個人が保有している法人株式の評価額が上昇したとき

税理士ですら見逃してしまうほど、みなし贈与課税は非常に難しい概念です。
財産を無償でもらっただけではなく、間接的に何かしらの利益を個人から受けた場合にも、贈与税が課税される可能性があるということにご注意ください。

贈与税は今後どうなっていくか

最後に少し堅苦しいお話をします。笑

本記事では贈与税の仕組みを解説いたしましたが、この贈与税の仕組みを大きく変えようと、現在、国は議論を活発に進めています。

具体的には、今は制度が分かれている贈与税と相続税という税金を、一体化していこうという動きです。

贈与税という税があるのは、相続税という税があることが理由です。

贈与税は相続税を補完する「補完税」といったりします。

相続税は、ある個人が亡くなった時点の全ての財産に対して課税されます。

しかし、亡くなった時点の財産しか見ないので、生前に財産を贈与してしまえば、相続税は一切かからないことになります。

このように、生前贈与によって相続税の制度が骨抜きにならないように、生前贈与に対して税金を課税する贈与税というものがあるのです。

 

しかし、そうはいっても、贈与税と相続税は仕組みが異なるところも多くあり、生前贈与をうまく活用して相続税を節税する人が多い状況です。

そこで国は、生前贈与を行っている人だけが相続税を節税できるのは不公平だとして、改革を進めている最中です。

改革の1つとして、相続開始前一定期間の生前贈与は、全て相続財産に加算して相続税を計算するという生前贈与加算という制度がありますが、この加算期間を3年から7年と大幅に延長する改正を行いました。

急いで生前贈与で対策しても、結局は相続税として課税される、ということです。

相続税と贈与税の一体化については、以下の記事でも解説しておりますので、もしご興味があればご覧いただければと思います。

【2023年度税制改正】相続税と贈与税が一体化するとどうなる?

なお、余談ですが、相続税は所得税の補完税ともいわれています。

所得税は、個人の1年の所得に対して課税されるわけですが、個人の全ての所得を国が網羅的に把握するのは困難です。

現金商売で所得税無申告という方もいらっしゃいます。
しかし、それでは生きている間に所得税が課税されない財産が存在してしまうかたちになります。

そこで、亡くなった時点で所得税が課税漏れになっている現預金などの財産全てに対して、相続税を課税するのです。

所得税が網羅的に課税できないので、それを補完するために相続税が存在しているのです。

そして、相続税は生前贈与で骨抜きになってしまうので、それを補完するために贈与税が存在しているのです。笑

まとめ

贈与を行うにあたっては、贈与税の検討が必須となります。

例え現金を贈与するだけであっても、契約書類や預金書類の整理など、注意すべきポイントが多くあります。

中には専門家に相談せずに自身で誤った生前贈与を行ってしまい、相続のときに結局税金を納めることになったケースも多く見てきました。

贈与を行う際には、税理士に事前のご相談されることを強くおすすめいたします。

 

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