不動産を活用すると相続税対策になる?節税の仕組みを解説!

「相続税対策で不動産を購入しませんか?」といった不動産会社の営業やパンフレットを見たことはありませんか。

実際に、不動産を購入すると相続税の節税に繋がるケースが多くあります。しかし、それらを悪用した結果、税務署に否認されるケースも増えており、不動産を活用した相続税対策は落とし穴もあります。

そこで、不動産を活用した相続税対策や相続税評価の計算方法、注意点などをご紹介していきたいと思います。

不動産を活用すると相続税対策になる!

結論から申し上げると、手持ちの現預金などの財産を不動産に組み替えることで、相続税対策になるケースは非常に多いです。

これは、相続税を計算する際の財産評価の方法をうまく活用することによるものです。

相続税を計算する際に所有する不動産の時価を計算するのですが、不動産の時価を評価するということは非常に難しい作業です。しかし逆に、この難しさをうまく活用すると、相続税の対策になるケースがあります。

なぜ不動産を購入すると相続税対策になるのか

不動産を購入すると相続税対策になる理由は、不動産の相続税評価方法の特殊性にあります。

相続税法は、相続税の計算の際に財産を全て時価で評価することを求めています。

ただし、現預金や上場株式などは時価がすぐに分かりますが、不動産の時価というのはなかなか分かりづらいものです。

不動産はどれ1つとして同じものはなく、自宅の不動産の時価と言われても答えられない人がほとんどではないでしょうか。

 

そこで、実際は家屋は固定資産税評価額、土地は路線価や倍率方式、といった国税庁が定めている評価方法にしたがって、機械的に計算していくかたちになります。

その機会的な計算を行っていくと、現預金や上場株式などの金融資産で財産を持っているよりも、不動産を持っていたほうが相続財産の評価額が下がることがあります。

この不動産の評価差額を利用するのが、不動産の購入による相続税対策です。

 

不動産の相続税評価の計算方法

では具体的に、不動産の相続税評価はどのように求めるのでしょうか。

以下で、相続税を計算する際の不動産(家屋、土地)の時価の評価方法についてご紹介いたします。

家屋の相続税評価

家屋の相続税評価額は、固定資産評価額を使用することになっています。

固定資産評価額とは、家屋が所在している市区町村が、その家屋の再建築価格などを計算して求めた金額になります。

毎年、ご自宅に市区町村役場から固定資産税の納税通知書が届くかと思いますが、そこに記載されている金額となります。

家屋の固定資産税評価額の計算方法は非常に難しいですが、新築物件の場合は建築費の60~70%程度の水準で評価されることが多いように感じます。

また、その家屋を賃貸している場合には、貸家の評価減として、以下の計算式で求めた割合を家屋の相続税評価額から引くことができます。

貸家の評価減割合 = 30%(借家権割合)×賃貸割合

例えば、1億円で賃貸アパートを新築したとします。

アパートの固定資産評価額は、建築の70%と仮定して7,000万円。さらに全室入居している場合には貸家の評価減を加味して、7,000万円×(1-30%×100%)=4,900万円が賃貸アパートの相続税評価額となります。

上記の例ですと、1億円を預金として持っているとその1億円に対して相続税が課税されますが、賃貸アパートを建てると4,900万円と大幅に相続税の課税価格が下がります。

土地の相続税評価

土地の相続税評価額の計算方法は、「路線価方式」と「倍率方式」の2つに大きく別れます。

全国の各地域の実情に応じて、国税庁がここは「路線価方式」の地域、ここは「倍率方式」の地域、と指定しており、国税庁が指定した評価方式を採用するかたちになります。

地方に行くほど、「倍率方式」の地域が多くなるイメージです。

以下、それぞれの計算方法の概略をご紹介いたします。

路線価方式

国税庁は毎年、全国の道路に対して路線価という㎡あたりの土地価格を公表しています。路線価は土地価格の時価の80%程度を目安に設定されています。

路線価は以下の国税庁HPから見ることができます。

路線価方式とは、この路線価を使用して、「路線価×土地の地積」で土地の相続税評価額を求めます。

なお、土地の形が歪であったり、奥行きが長い土地などは価値が落ちるとして、補正率というものを使用して評価を下げることができます。

倍率方式

国税庁の路線価が定められていない地域については、固定資産税評価額に国税庁が定めた一定の倍率を乗じて、「固定資産税評価額×倍率」という計算式で土地を評価します。

倍率を乗じて評価することから、倍率方式といいます。

土地の評価の際に適用できる評価減

路線価方式や倍率方式で評価した土地の評価からさらに、以下のような評価減を適用して土地の評価を下げることができます。

貸宅地の評価減

土地を貸していると、賃料の水準にもよりますが、借地権の金額だけ土地の評価を下げることができます。

国税庁は路線価の公表とあわせて、全国各地の借地権割合というものを設定しています。

この借地権割合の分だけ、以下の算式のように土地の評価を下げることができます。

貸宅地の評価額 = 土地の更地評価額 × (1-借地権割合)

貸家が建っている土地(貸家建付地)の評価減

土地の上に賃貸アパートや戸建貸家を建てて賃貸している場合も、以下の算式に基づいて土地の評価を下げることが出来ます。

貸家建付地の評価額 = 土地の更地評価額 × (1-借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)

地積規模の大きな宅地の評価減

土地が500㎡以上の面積(一定の地域は1,000㎡以上)になると、その土地を宅地化する際に、道路などを設置して開発しなければならず、実際には宅地として使用できない部分が生じてしまいます。

そのため、面積が大きな宅地については、面積以外にも一定の要件を満たすと、地積規模の大きな宅地の評価減として、20~30%程度土地の評価を下げることができます。

不動産を活用した相続税対策

不動産を活用した相続税対策で主なものを以下でご紹介いたします。

賃貸アパートを建築、購入する

手元に多額の現預金がある場合には、その現預金を元手に賃貸アパートを購入すると、相続税の課税価格が大きく下がります。

まず、アパート建物については、固定資産税評価額が実際の建築費よりも安く評価され、貸家の評価減も適用できます。

土地部分についても、貸家建付地として、賃貸割合に応じて評価減で評価額を下げることができます。

また、手元に多額の現預金がなくとも、銀行から借入をして賃貸アパートを建築する方法もあります。

この場合は、銀行からの借入金を債務控除として、相続税の申告上は控除することができるので、課税価格の減少効果はさらに高いものとなります。

土地の利用方法を変えてみる

新しく不動産は購入せず、土地の利用方法を変えてみるだけでも、相続税対策につながることがあります。

例えば、現在空き地になっている土地を賃貸に出せば、貸宅地として評価を下げることが可能です。賃料収入も入ってきます。

また、未利用の宅地が複数ある場合に、それらをまとめて1つの店舗用地やアパート用地として使用できれば、面積等の状況によっては、地積規模の大きな宅地の評価減を適用できる可能性もあります。

小規模宅地等の特例を検討する

被相続人の居住用の宅地であったり、事業用の土地については、一定の面積まで最大で80%の評価を減らすことが出来る、小規模宅地等の特例という制度があります。

小規模宅地等の特例は要件が非常に複雑なのですが、その要件を満たせば節税効果は非常に高いものになります。

要件を満たすために、居住関係を見直したり、賃貸関係を見直すといったことをするだけで、相続税対策に繋がる可能性があります。

不動産の組み替え

現状使用していない雑種地や田畑をお持ちの方も多いと思います。

ご先祖様が残してくださった不動産を売却するのは忍びないですが、使用していない遊休不動産を譲渡して、現金化したり、他の収益不動産を購入するというのも1つの対策です。

遊休不動産は、賃料等は一切生まず、保有しているだけで固定資産税と相続税がかかります。

それならば、現金化して相続で分割しやすくしたり、他の賃貸不動産に買い換えるというのも、家族の資産を残していくという意味では有力な選択肢です。

不動産を活用した相続税対策の注意点

不動産を活用した相続税対策には注意点もあります。以下でご紹介いたします。

賃貸不動産の経営リスク

賃貸アパートなどの賃貸不動産を建築して相続税対策をされる方の注意点です。たしかに、賃貸不動産を建築して、銀行からの借入も行えば、相続税は大幅に圧縮される可能性が高いです。

しかし、目先の相続税は安くなるとは思いますが、現在は建築費も高騰していますし、地方を中心に人口減収で入居者がつかなくなる可能性もあります。

さらに、借入も行えば利息負担もあるでしょう。ある程度年数が経ったあとの大型修繕費も相当な金額になります。

賃貸不動産経営というのは、エリアにもよりますがリスクが高い事業だと思います。

相続税対策だけではなく、次世代、さらにその次の世代まで考えて、賃貸不動産が負の遺産にならないか、よく検討してから経営を開始したほうが良いかと思います。

税務署による相続税対策の否認

不動産の相続税評価額の特殊性を利用して、相続税を大幅に圧縮する事例が多くなってきました。

中には、10億円超の相続財産を圧縮して相続税を0円にしてしまうような事例も出てきました。

2022年には、最高裁が行き過ぎた不動産の相続税対策に対してノーを突きつけた事例もあります。

それに伴い、税務調査の現場でも、相続開始直前に借入をしてアパートを建てたり、相続税対策目的としか見られないような不動産の購入は否認されている事例が増えているようです。

賃貸経営の一環として賃貸不動産を建築するといったことは大丈夫だと思いますが、明らかに相続税対策としか見られないような不動産の購入は控えたほうが良いでしょう。

 

まとめ

うまく活用できれば、不動産の購入は相続税対策に大きく貢献します。

しかし、不動産の評価は、最近は税務署も目を光らせている分野であり、安易な相続税対策の不動産購入は否認されてしまう可能性が非常に高いです。

税理士から最新の税務事情の情報も入手しつつ、相続対策を考えていっていただくことをおすすめいたします。

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