「終活」という言葉を耳にすることが最近増えてきました。
終活とは、自分の人生の最後を見据えて、残される家族や身辺の整理を行うことです。
終活というのは、特に法律で定められている手続きではないため、各人、どんなことをしても自由です。
ただし、最低限、ここだけは生前に整理しておいた方が良い項目があります。
そこで、今回は終活でやることリスト10個をご紹介いたします。
税理士ならではの、税金の視点も含めた解説も織り交ぜていきたいと思います。
Contents
終活でやることリスト10個
では、早速、終活でやることリスト10個をご紹介していきます。
項目 | 終活でやること |
1 | 終活に対して危機感を持つ |
2 | 財産、債務の棚卸 |
3 | 相続税対策 |
4 | 遺言書の作成 |
5 | 認知症対策 |
6 | 葬儀やお墓の準備 |
7 | 医療介護の準備 |
8 | 住まいについて |
9 | デジタル情報の管理 |
10 | エンディングノートの作成 |
1.終活に対して危機感を持つ
まず、ここが一番重要です。
特に元気なうちは、誰しも自分が亡くなった後のことなど考えたくはないはずです。
しかし、人間、いつまでも健康にいられるとは限りません。もし自分が今日亡くなっても良いように、終活で事前の準備をしっかりしておくことが必要です。
その必要性を認識するためにも、自分に相続が発生したときに相続人がやるべきことを理解することが必要です。
相続が発生した場合、相続人は数多くの手続きに悩まされます。故人の財産債務調査、葬式お墓の手配、遺産分割、税金の申告などです。
これらの手続きは、自分が生前に終活で対策しておくことで、負担を大きく軽減することができます。
まずは、「自分が亡くなった場合に相続人はこんなに大変なことをしなければならないのか。」ということを理解し、危機感を持つことが終活の第一歩です。
2.財産、債務の棚卸
ご自身が所有している財産、債務を洗い出しましょう。
自分の財産、債務の状況については、同居している家族であってもなかなか把握していないことが多いのではないでしょうか。
私も相続発生後のご相談を多く受けますが、同居している家族がこんな財産を持っているとは知らなかった、と驚かれる方も多いです。
また、実は銀行や消費者金融からお金を借りていたということもあり得ます。債務は基本的に相続人が引き継ぐことになります。
相続人にとってサプライズにならないよう、予め生前に自身の財産、債務を棚卸して、エンディングノートなどにまとめておくことをおすすめいたします。
可能ならば生前に相続人に情報共有しておく方が良いですが、難しい場合には相続発生後のためにノートやメモを残しておくだけでも、相続人の負担は大分軽減されるかと思います。
3.相続税対策
財産、債務の棚卸をすると、自身の大体の遺産規模が分かります。
この点、相続税の基礎控除を超えるような遺産になると見込まれる場合は、相続税の対策も必要になってきます。
オーソドックスな対策としては、生前贈与で家族に毎年財産を移転していく方法です。
ほかにも、生命保険や不動産を活用した対策など、色々なものがあります。
なお、ここであわせて注意したいのが、相続税対策にだけ焦点をあててはいけないということです。
例えば、相続税対策のために、ある相続人に集中して財産を生前贈与した場合、他の相続人は不公平を感じると思います。
それが結果として、相続争いに発展してしまう可能性があります。次項の遺言書とセットで、家族にどのように財産を残していくか、は慎重に検討した方が良いかと思います。
4.遺言書の作成
相続人が複数人いる場合には、被相続人の財産について遺産分割を行う必要があります。
普段は仲の良い家族であっても、遺産分割の場面では敵対関係になってしまうケースも多いです。
「私は家族を信頼しているから遺言なんて書かくなくても大丈夫」と仰られる方もいらっしゃいますが、相続人たちのことを真に考えるならば、遺言は残しておいた方が良いと思います。
遺言がある場合は、基本的に遺言の内容に基づいて遺産分割が行われます。
ただし、特定の相続人の分割割合が少ない場合には遺留分の侵害額請求というものが行われる可能性があります。遺留分に配慮した遺言を書くことが重要です。
5.認知症対策
今や、日本の高齢者の多くが認知症、またはその予備軍となっています。
認知症になり、法律上の意思能力がないと判断されてしまうと、自分自身では預金口座の入出金や不動産の売却などができなくなってしまいます。
成年後見人という人が付き、その方の管理下におかれます。
この点、認知症対策として、認知症になる前に、任意後見契約や家族信託契約を締結される方が最近増えています。
日本人の寿命は年々伸びていますが、健康でいられる期間(健康寿命)というのはそれよりも短いです。
自身が健康でいられなくなった後の人生についても、終活の中で考えていく必要があります。
6.葬儀やお墓の準備
最近では葬儀社も生前の相談に力を入れており、葬儀を生前予約できるようなサービスもあります。
相続が発生すると相続人は様々な手続きで忙殺されるため、葬儀の場所が決まっているということは相続人の負担軽減になります。
また、生前にお墓を建てることも可能です。お墓は相続税の非課税財産となりますので、相続発生後にお墓を建てるよりも、生前にお墓を建てた方が相続税の節税になるというメリットもあります。
7.医療介護の準備
自分の体が衰えてきたときに、どのような病院で治療を受けたいか、どのような介護施設で介護を受けたいか、といった希望を家族に伝えておくことが重要です。
また、治療については、危篤状態などになったときに備えて、延命措置を望むのか、や臓器提供の意思なども家族に伝えておくと良いでしょう。
8.住まいについて
老後の自身の住まいについても、家族と話しあっておくことが重要です。
今の家に住み続けるのか、子供たちと同居するのか、施設に移るのか、様々な選択肢があります。
なお、どこに住むかによって、相続税の小規模宅地の特例や、所得税の譲渡所得の特例の適用可否が変わってくるため、どこに住むかということは税金対策上も重要な決め事になってきます。
9.デジタル情報の管理
今や、高齢の方でもほとんどの方がスマートフォンをお持ちなのではないでしょうか。
スマートフォンのアプリを使用して、ネット証券で投資をしたり、ビットコインに投資をしたり、インターネットバンキングを利用している方も多いかと思います。
現在、デジタルの資産が世の中には数多く存在しています。
この点、アプリにログインするためには、IDやパスワードが必要となってきます。
また、そもそもスマートフォンにロックを解除するためのパスワードもあります。
これらのIDやパスワードが残されていないと、相続人はスマートフォンやデジタル資産にアクセスできなくなってしまいます。
スマートフォンのロックに関してはロック解除の専門業者さんもいらっしゃるようですが、時間も費用もかかります。
ネット証券やネットバンクについても、ネットで問い合わせすればID、PWの照会に応じてくれるかもしれませんが、これもかなりの時間がかかります。
自分の死後、相続人がデジタル関係の情報にアクセスできるようにするために、アプリ別のID、PWの一覧を残しておくことが近年非常に重要になっています。
10.エンディングノートの作成
整理した自分の財産、債務の一覧や、医療介護の希望、デジタル資産の情報などを、エンディングノートとしてまとめておく方もいらっしゃいます。
エンディングノートというのは、法的な書類ではなく、様式や書き方に縛りは一切ありません。
そのため、ご自由にノートやメモやExcelなどにご自身が終活にあたって整理した事項を書き留めておくかたちで問題ありません。
一方で、法的効力がない書類になりますので、財産の残し方などの法的にしっかり整理し他方が良い事項については、遺言書を作成されることをおすすめいたします。
遺言書には法的な事項を記載しておき、エンディングノートにはその他の事項を記載しておくという合わせ技も良いかと思います。
終活についてよくあるご質問
いつから終活を始めればよいか?
終活はいつから始めても早すぎるといったことはありません。
一般的には定年の60歳くらいから意識される方が多いですが、30~40歳代で遺言を書かれる方もいらっしゃいます。
人間、いつどうなるかは誰にも分かりませんので、終活は早ければ早いに越したことはないです。
自分は独り身だが終活は必要か?
相続が発生した際、配偶者や子どもがいなくても、相続権は兄弟姉妹まで続きます。
仮にご自身が独り身であったとしても、残された兄弟姉妹のために終活は必要になってきます。
むしろ、普段遠縁の兄弟姉妹だからこそ、終活の必要性は増してきます。
また、兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、遺言を書いておけば、兄弟姉妹間で遺留分を巡る相続争いが起こることもありません。
遺言などが残されていない兄弟姉妹のご相続のご相談も受けますが、普段交流のない兄弟姉妹間で財産調査や遺産分割を行っていくのは、通常の相続よりも大変な作業です。
ぜひ、独り身の方こそ終活をされた方が良いかと思います。
終活はどれから手を着けたらよいか?
基本的には、上記のやることリストの上から順番に沿って着手いただくと、スムーズかつ、抜け漏れがなく終活を進めることができるかと思います。
まず一番重要なことは、現状把握です。
まとめ
終活でやることリストについて、主なものを10個挙げさせていただきました。
他にも各個人の状況によって、終活でやるべきことがあるかもしれませんが、適宜着手していけば良いのではないかと思います。
ご自身が元気なうちに終活が完了するようにしましょう。