相続財産清算人とは?相続財産管理人との違いやどんな時に必要になるのか?解説!

最近、ご結婚されておらずお一人の方や、ご家族に先立たれ相続人がいないといった方が増えてきたように思います。

この点、よくご質問を受けるのが、「相続人がいない私の財産は、私が亡くなったらどうなってしまうの?」、というご質問です。

相続人がいないような方の場合、その方が亡くなってしまうと、所有していた不動産などの財産は所有者がいなくなり、宙に浮いてしまいます。

ただし、財産が宙に浮いたままになってしまうと、例えば自宅不動産が倒壊寸前の空き家になったりしてしまい、近隣や地域にも迷惑をかけてしまいます。

借り入れや債務がある方は、債権者が債権を取りはぐれてしまいます。

そのようなことがないよう、相続財産清算人という制度があります。

相続財産清算人という制度を使えば、相続人がいなくても、相続財産清算人が代わりに相続財産の管理処分を行ってくれます。

そこで今回は、相続財産清算人の制度の仕組みや、よく混同されがちな相続財産管理人との違いを中心に解説していきたいと思います。

 

相続財産清算人とは

相続財産清算人とは、相続放棄をした結果誰も相続人がいなくなった場合や、相続人がいるかどうか不明な場合に、相続財産の管理・処分等を行う人です。

相続人がいなかったり、誰が相続人であるか不明な場合は、お亡くなりになった方が保有していた不動産などの資産を管理する方がいなくなってしまいます。

また、お亡くなりになった方が、誰かに借り入れなどをしていた場合は、その返済が滞ってしまいます。

このような場合に、相続財産清算人を選任することで、相続財産の管理を継続して行うことができます。

最近は、身寄りがなく独り身で、相続人がいないというケースも見聞きします。相続財産清算人は、今後ますます注目度が上がってくる制度かもしれません。

 

相続財産清算人はどのような時に必要になるのか

相続財産清算人が必要とされるケースは多くありますが、以下に主な事例をご紹介いたします。

ケース1:債権者が被相続人に貸していたお金を回収したい

被相続人に対してお金を貸していた人(債権者)は、相続人がいない場合には、誰からもお金を回収することができなくなってしまいます。

そのため、債権者が相続財産清算人の選任を申し立て、相続財産清算人からお金の弁済を受けるといった使い方があります。

ケース2:被相続人の介護などを行っていた人(特別縁故者)が財産分与を受けたい

相続人ではなくとも、被相続人のご友人などで、被相続人の身の回りの世話をしていた方もいらっしゃるかと思います。

その方には、財産分与として相続財産の一部が与えられる可能性があります。財産分与を受けるためには相続財産清算人を選任する必要があります。

ケース3:所有者不明の空き家を市区町村が処分したい

最近、社会問題にもなっていますが、所有者不明の空き家が増えています。

このような空き家は相続人がいなかったり、不明なケースが多いです。

ただ、これを放置しておくと、景観や安全上好ましくないため、市区町村が相続財産清算人の選任を申し立て、空き家の処分等を行うといった使われ方もします。

 

相続財産清算人と相続財産管理人の違い

ネットや書籍を見ていると、似たような言葉で相続財産「管理人」という言葉を見かけることがあるかと思います。

実は、相続財産「清算人」という言葉は、2023年4月の民法改正によって新しく生まれた制度で、それまでは相続財産「管理人」という呼ばれ方をしていました。

ただ、民法改正後も相続財産「管理人」という制度自体は、内容を変えて残り続けています。

民法改正前後の両者の比較を表にまとめると以下の通りです。

相続財産の清算目的 相続財産の保存目的
2023年4月民法改正 相続財産「管理人
2023年4月民法改正 相続財産「清算人 相続財産「管理人

民法改正前は、相続財産「管理人」は、清算目的と保存目的の2つの種類がありました。

これが、民法改正後は、清算目的は相続財産「清算人」、保存目的は相続財産「管理人」と名前が分かれることになったのです。

なお、名前が変わっただけではなく、清算目的、保存目的のいずれについても、制度の中身がより使いやすく改良されています。

これは、2023年4月の民法改正の目的の1つとして、相続人に放置されて荒廃している土地を、相続財産管理制度を有効活用して適切に管理したいという社会的ニーズに応えるという目的があったためです。

古い書籍やWebの記事では、相続財産管理人という言葉を、2023年4月の民法改正前の意味で使用しているものが散見されるため、注意が必要です。

権限の違い

民法改正後の相続財産「管理人」は、相続財産の維持管理や修繕といった保存行為のみを行うことができます。

したがって、債務の弁済や不動産の処分といった清算行為を行うことができません。

清算行為を行うためには、相続財産「清算人」を選任する必要があります。

選任できるケースの違い

相続財産清算人は以下のようなケースでのみ、選任することができます。

  • 相続人の有無が明らかでないとき
  • 相続人全員が相続放棄をした結果、相続するものがいなくなったとき

一方で、相続財産管理人は、以下のようなケースを除いては、相続発生後、いつでも選任を申し立てることができます。

  • 相続人が1人である場合で、その相続人が単純承認をしたとき
  • 相続人が複数いる場合に遺産の全部について分割がされたとき
  • 相続財産清算人が選任されているとき

具体的には、相続承認後から遺産分割が完了するまでや、相続財産清算人が選任されるまでの空白の期間に、相続財産管理人を活用することが考えられます。

 

相続財産清算人の選任から清算完了に至るまでの流れ

相続財産清算人の選任から、清算完了に至るまでの流れは以下の通りです。

全ての手続きが完了するまでに、最低でも半年~1年程度はかかるイメージです。

 

  1. 相続財産清算人の選任及び公告
  2. 相続債権者・受遺者への請求申出の催告
  3. 相続債権者・受遺者への弁済
  4. 特別縁故者に対する相続財産分与
  5. 共有持分の共有者への帰属
  6. 国庫へ帰属

 

以下、それぞれの手続きの詳細を解説いたします。

1.相続財産清算人の選任及び公告

相続財産清算人は、利害関係人(債権者や内縁の妻など)や検察官が、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所へ申し立てを行うことによって選任されます。

また、相続財産清算人の選任と同時に、相続人がいれば家庭裁判所に申し出るようにアナウンスする、相続人を捜索するための公告も行われます。

この公告により相続人が現れた場合には、相続財産は相続人が相続するかたちとなり、手続きは完了します。

相続財産清算人の選任については、ポイントを以下で解説いたします。

選任の申し立てを行うことができる人

誰でも相続財産清算人の選任を申し立てできるわけではありません。

具体的には、相続財産に対して以下のような利害関係のある人が、相続財産清算人の選任の申し立てをすることができます。

選任申し立てができる人 説明
債権者 亡くなった人に対して売掛金や貸付金などの債権を持っていた人
特別縁故者

 

亡くなった人と同一生計の内縁の妻、事実上の養子など
不動産の共有者 亡くなった人と不動産を共有で所有していた人
検察官 国が相続財産清算人を必要とするケースがあるため
国や市区町村 所有者不明の空き家を処分するために国や市区町村が申し立てるケースがあるため

 

相続財産清算人選任の必要書類、費用

個人の方がご自身で相続財産清算人を申し立てるというよりは、弁護士等の専門家に相談して申し立てを行うことが多いため、必要書類や費用について、本記事では詳細の説明は省略いたします。

以下の裁判所のホームページに必要書類や費用について記載がありますので、ご参考までにご覧いただければと思います。

https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html

(出典 裁判所)

 

家庭裁判所による相続財産清算人の選任

家庭裁判所は、相続財産清算人選任の申し立てがなされると、相続財産を管理処分するのにふさわしい人を相続財産清算人として選任します。

通常は、第三者の専門家である弁護士や司法書士が選任されるケースが多いです。

2.相続債権者・受遺者への請求申出の催告

相続財産清算人は、選任されたらまず、相続債権者と受遺者に対して、その権利の請求を申し出るように公告を行います。

これを、相続債権者・受遺者への請求申出の催告といいます。

催告の期間は2か月以上必要です。相続債権者・受遺者は、この催告期間内に申し出をしなければ、その権利を請求することができなくなります。

3.相続債権者・受遺者への弁済

相続債権者・受遺者への請求申出の催告の期間が終了したら、相続財産清算人はまず、相続債権者に対して相続財産から債務の弁済を行います。

その後、受遺者に対しても弁済を行います。

弁済のために資金を捻出することが必要な場合には、相続財産を競売にかけたりもします。

この相続債権者・受遺者への弁済により、相続財産が全てなくなった場合には、清算手続きは完了となります。

4.特別縁故者に対する相続財産分与

相続人捜索の公告期間が終了しても相続人が現れない場合、家庭裁判所の判断により、相続財産の全部または一部が特別縁故者に渡ります。

なお、この場合、特別縁故者は家庭裁判所に対して、相続財産分与の申し立ての手続きを行う必要があります。

黙っていても相続財産はもらえないということです。

5.共有持分の共有者への帰属

相続人や債権者、受遺者がおらず、特別縁故者への財産分与もなかった場合で、相続財産の中に共有財産がある場合、その共有持分は他の共有者に渡ります。

6.国庫へ帰属

上記のすべての手続きを行ってもなお、相続財産が残っている場合には、その相続財産は国庫に帰属します。国の財産になるということです。

よく、相続人などがいないと、自分の財産は国に行ってしまう、と言われるのはこのことですね。

 

まとめ

相続財産清算人制度の仕組みや、相続財産管理人との違いを解説いたしました。

今後、結婚率の低下や高齢者人口の増加等により、相続人が不明、存在しない、といった相続が増えてくるものと予想されます。

自分の近しい人や取引先で、相続人がいないと見込まれる方に関しては、相続財産清算人や管理人の制度を活用することをご検討ください。

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