相続税は、基本的にお亡くなりになった方のすべての財産に対して課税されます。
現金で家の中に置いてあるタンス預金も、漏れなく対象になります。
現金で置いておけば税務署も分からず、相続税対策になるのでは、と思う方もいるかもしれませんが、多額のタンス預金は税務署に知られる可能性が非常に高いです。
今回は、タンス預金が相続税対策になるのかどうかや、タンス預金が税務署に把握された場合のリスクなどを解説していきたいと思います。
Contents
タンス預金は相続税対策になるのか?
結論から申し上げますと、タンス預金は相続税対策にはなりません。
なぜならば、相続税は基本的にお亡くなりになった方のすべての財産に対して課税されます。
お金が預金口座にあるか、家やタンスの中に現金であるか、といったことは関係ありません。タンス預金も相続税が課税されます。
現金で置いておけば税務署にバレないのではないか?
タンス預金も相続税の対象になることを知った上で、お金を現金で置いておけば税務署もその金額は分からないはずなので、結果的に相続税対策になるのでは、と考える方もいらっしゃいます。
ですが、その認識も誤りです。
税務調査では、被相続人や相続人の預金通帳について、過去10年程度の入出金履歴を調査されます。
その過程で調査官は、例えば100万円以上の多額の出金履歴があった場合、その金額に見合う不動産や株式などの財産を購入し財産計上していれば問題ないのですが、見合う財産が計上されていない場合には、タンス預金があるのではないかと疑います。
実際の税務調査でも、過去10年間の預金の入出金履歴から、100万円以上のすべての明細の取引内容を質問されたことがありました。
質問の回答があやふやですと、出金された金額はタンス預金として課税される可能性が非常に高まります。
家の屋根裏や床下、庭の土の中に隠していたタンス預金が見つかった事例もありますので、税務署の調査能力を甘く見ない方が良いかと思われます。
タンス預金がバレた場合の税務上のリスク
税務署は、相続税の申告期限から5年間(不正事案などは7年)は税務調査に入ることができます。
その税務調査で、タンス預金がバレると、相続税申告書にタンス預金を追加の財産として計上するよう求められます。
その結果、タンス預金の金額に相続税率を乗じた相続税額が追徴課税されます。また、延滞税や加算税といった追加の税金も課税されます。
延滞税や加算税の詳細については、以下の記事もご参照ください。
タンス預金をすることのメリット・デメリット
タンス預金をすることの税務上のデメリットをお伝えしてきましたが、相続手続きなどでメリットが生じるケースもあります。
そこで、以下ではタンス預金をすることのメリット・デメリットをご紹介いたします。
メリット
①預金口座凍結の対策になる
相続が発生したことが金融機関に判明すると、預金口座が凍結されてしまい、相続手続きが完了するまでは自由に入出金ができなくなってしまいます。
しかし、生前にタンス預金として出金しておけば、預金口座凍結の影響を受けません。相続発生後の葬式費用や税金をスムーズに支払うことが可能になります。
②ペイオフ対策になる
1,000万円超の預金を預けている金融機関が破綻した場合、1,000万円までは保証してくれるペイオフという制度があります。
逆に言うと、1つの金融機関に1,000万円超の預金をしていると、金融機関が破綻した場合に戻ってこないお金が発生する可能性があります。
そのため、ペイオフ対策として、ある程度の金額を現金で引き出しておき、タンス預金として置いておく方もいます。
デメリット
①相続税の追徴課税リスクがある
タンス預金も相続税の課税対象になることはご説明した通りです。
相続人がタンス預金の存在を把握していれば、相続税申告書に反映して適切な申告書を作成できます。
しかし。被相続人がタンス預金をしているかどうかを把握している相続人はそう多くはありません。
そのため、相続人がタンス預金の存在を知らずに相続税申告書を提出してしまうと、後で税務調査が来て、多額の相続税と加算税を納めるリスクがあります。
タンス預金をする場合は、キチンと出納帳をつけるなどして残高管理を行い、相続人にも知らせておくことが望ましいです。
②盗難や災害による紛失のリスク
タンス預金として現金を自宅などに保管していると、自宅に泥棒が入った際に、現金を全て持ち出されてしまうかもしれません。
特に、資産家の方のお家は、泥棒に入られているケースも多く、注意が必要です。また、火事や水害などで、タンス預金が消失してしまうおそれもあります。
③相続争いのタネになる可能性もある
相続人同士の関係が悪い場合、お亡くなりになった方の財産がいくらあったか、ということが焦点になります。
この際、タンス預金として出金された、内容が不明瞭な出金履歴があると、もしかしてこのお金は他の相続人が生前に贈与としてもらっているのではないか、などの疑いが生じ、相続争いのタネになってしまう可能性があります。
2024年の新札切り替えの影響
2024年に紙幣が新札に切り替わることが予定されています。
新札が発行されたとしても、直ちに旧紙幣が使えなくなるというわけではないのでご安心ください。
ただし、切り替えからしばらくたつと、ATMなどで旧紙幣が受け付けられなくなるという可能性はあります。
旧紙幣が受け付けられなくなったとしても、銀行窓口で新札に切り替えれば問題ありません。
なお、銀行窓口で新札に切り替えた際に、その金額を預金したりすると、税務署にその動きが把握され、過去タンス預金があったのではないか、という情報を国に把握される可能性はあります。
まとめ
タンス預金は相続税対策にはなりません。また、盗難や災害による消失のリスクもあります。
一方で、すぐに使えるお金という点で、預金口座凍結対策には有効です。相続後の葬儀費用や不動産の維持管理費程度はタンス預金として置いておくのは選択肢かと思います。
ただしその場合は、相続税でタンス預金の計上が漏れることがないよう、残高管理を行い、相続人にも知らせておくようにしましょう。