相続手続きに必要な書類について徹底解説!

ご家族が亡くなると、銀行、有価証券、不動産、税務申告などの様々な相続手続きが発生し、必要な書類も多岐に渡ります。

相続というものは人生で何度も経験するものではありませんから、どのような書類を集めれば良いか、ご不安な方も多いかと思います。

そこで、今回は相続手続に必要な書類について解説していきます。

主な相続手続きの内容と、スケジュール、必要書類

結論から申し上げますと、相続が発生した場合の主要な手続きとスケジュール、必要書類は以下のとおりです。

各手続きの詳細

各手続きの詳細に移ります。

戸籍、住民票等の収集(相続人確定)

相続について話し合うのは相続人です。戸籍、住民票等に基づいて早いタイミングで相続人を明らかにして、誰と一緒に相続の話し合いを進めていくかを確定させます。

戸籍、住民票関係で一般的に必要となってくる書類は以下の通りです。

被相続人の除籍謄本

取得費用は1通あたり750円です。

除籍謄本とは、ある戸籍に記載されていた人が相続発生や離婚といった理由でその戸籍から外れたことを示す書類です。

除籍謄本は、被相続人の本籍地に市区町村役場の窓口で取得できます。日中時間が取れない場合は郵送請求も可能です。

被相続人の本籍地が分からないという場合には、以下の住民票除票をまずは取得しましょう。住民票除票には、被相続人の本籍地の記載があります。

被相続人の住民票除票

取得費用は1通あたり300~400円と、自治体によって金額が異なります。

住民票除票とは、ある人に相続が発生した場合に、住民票から外れたことを示す書類です。

住民票除票は、被相続人の最後の住所地の市区町村役場の窓口で取得できます。日中時間が取れない場合は郵送請求も可能です。

被相続人と相続人全員の戸籍謄本

取得費用は1通あたり450円です。

戸籍謄本は、被相続人と相続人の関係を確認するために使用します。

平成6年以前に生まれた方が亡くなられた場合は、現行の戸籍謄本の1つ前の制度の「改製原戸籍謄本」の取得も必要になります。

被相続人と相続人それぞれの本籍地の市区町村窓口で取得できます。日中時間が取れない場合は郵送請求も可能です。

また、コンビニの端末で交付を受けることも可能です。

コンビニ交付の場合は、役場窓口に比べて交付費用を安くしている自治体が大半なので、コストも節約できます。

ただし、コンビニ交付のためにはマイナンバーカードが必要な点に注意しましょう。

(コンビニ交付)

https://www.lg-waps.go.jp/01-06.html

相続人の戸籍の附票

取得費用は1通あたり300~350円と、自治体によって金額が異なります。

戸籍の附票とは、その戸籍が作られてから現在までの住所が記載されている書類です。

これにより、戸籍と住民票の情報を紐付けることが可能となります。

戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場の窓口で取得できます。日中時間が取れない場合は郵送請求も可能です。

また、コンビニの端末で交付を受けることも可能です。

相続人全員の住民票

取得費用は1通あたり300~400円と、自治体によって金額が異なります。

被相続人と相続人の同居関係などを確認するために必要となります。

住民票は、住所地の市区町村役場の窓口で取得できます。日中時間が取れない場合は郵送請求も可能です。

また、コンビニの端末で交付を受けることも可能です。

相続人全員の印鑑登録証明書

取得費用は1通あたり300~400円と、自治体によって金額が異なります。

印鑑登録証明書は、自治体に登録されている印鑑を証明する書類です。

遺産分割協議書を作成する場合などに必要となります。

印鑑登録証明書は、住所地の市区町村役場の窓口で取得できます。

また、コンビニの端末で交付を受けることも可能です。

法定相続情報一覧図

発行費用は無料です。

法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係をわかりやすくまとめた書類で、法務局で発行できます。

必ず作成しなければならない書類ではないですが、法定相続情報一覧図があると相続手続きで戸籍等の提出を省略できるケースが多いため、作成することをおすすめいたします。

法定相続情報一覧図は、近隣の法務局に戸籍等の資料を持ち込んで、法務局に書類を作成してもらいます。その後、無料で法定相続情報一覧図を発行してもらえます。

戸籍の収集等を専門家に依頼する場合

司法書士等の専門家に戸籍の収集、法定相続情報一覧図などの作成を依頼する場合、相続人の数などにもよりますが、10,000~100,000円+実費程度の報酬が発生する印象です。

 

相続財産、債務の調査

申告期限後3ヶ月以内が期限の、相続放棄や限定承認をするかどうかを判断するため、相続財産、債務の調査も行います。

財産、債務は様々なものがあり、調査方法も千差万別ですが、ほとんどの人が調査するであろう不動産と預金等の金融資産、負債の調査と費用についてご紹介いたします。

固定資産評価証明書

取得費用は1通あたり300~400円と、自治体によって金額が異なります。

固定資産評価証明書は、ある人がその自治体で保有している不動産の固定資産税評価額を記載した書類です。

相続税の計算や不動産の相続登記の際に使用します。

固定資産評価証明書は、不動産が所在する市区町村役場の窓口で取得できます。

なお、取得する際に備考欄に近傍宅地の1㎡あたりの固定資産税評価額を入れてもらうようにしましょう。

相続税の計算で近傍宅地の評価額を使用することがあり、固定資産評価証明書の取得のタイミングで依頼してしまえば、二度手間にならないからです。

名寄帳

取得費用は1通あたり200~300円と、自治体によって金額が異なります。

名寄帳は、ある人がその自治体で保有している不動産の固定資産税評価額等の情報を記載した書類です。

固定資産評価証明書と同じような書類に聞こえますが、固定資産評価証明書には固定資産税が非課税となっている公衆用道路や山林が記載されず、名寄帳にしか非課税不動産が記載されないケースがあります。

相続税の計算では、固定資産税が非課税であっても、相続税は課税となる不動産があります。

そのため、固定資産評価証明書だけですと、固定資産が非課税となっている不動産が相続税の計算で漏れてしまう可能性があります。

固定資産税が非課税の不動産も網羅的に把握するために、固定資産評価証明書だけでなく名寄帳も取得しましょう。

名寄帳は、不動産が所在する市区町村役場の窓口で取得できます。

不動産の登記事項証明書

取得費用は原則として1通あたり600円です。

しかし、50ページを超える場合には別途登記手数料が加算されます。

ある不動産の地積や地目、所有権や抵当権等の異動の履歴が把握できます。

名寄帳で被相続人の不動産を網羅的に把握してから、不動産の登記事項証明書を取得すると良いでしょう。

不動産の登記事項証明書は、不動産の所在する地域を管轄する法務局で請求できます。なお、日中時間が取れない場合は、郵送やオンライン請求も利用できます。

(登記情報提供サービス)

https://www1.touki.or.jp/

預貯金、借入金等の残高証明書の取得

取得費用は1通あたり500~1,000円程度で、金融機関によって金額が異なります。

なお、金融機関によっては上記よりもさらに高い金額を請求される場合もあります。

残高証明書は、銀行や証券会社などの金融機関の窓口で請求できます。

金融機関によっては、郵送やオンライン等で請求できるところもあります。

 

銀行に関しては、残高証明書に預金の残高や借入金の残高を記載してくれます。

その際に、定期預金や定期積金を保有していた場合には、相続開始時点で発生していた未経過利息を記載してもらうようにしましょう。

相続税の計算で必要な情報になります。

証券会社に関しては、株式や投資信託の保有数量や相続開始時点の時価を記載してくれます。

銀行、証券会社のいずれに関してもですが、必ず「相続開始日」時点の残高証明書を取得するようにしましょう。

相続税の計算などは「相続税開始日」時点の情報を使用します。たまに、相続発生後に金融機関の窓口に行った日付の残高証明書を取得されてしまう方がいらっしゃいますので注意してください。

相続財産、債務の調査を専門家に依頼する場合

司法書士等の専門家に不動産の評価証明や残高証明の取得を依頼する場合、取得する証明書1通につき、1,000円~2,000円以上の報酬+実費、といった報酬が発生する印象です。

また、金融機関の残高証明は少し値段があがり、最低でも1金融機関あたり10,000円以上の報酬が発生する印象です。

 

準確定申告

次に期限のあるイベントは準確定申告です。

準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日(通常は、被相続人が死亡した日)の翌日から4か月以内」です。

準確定申告とは、1年を被相続人が亡くなった日までの期間で区切って、それまでの実績で所得税、消費税の確定申告を行うものです。

必要な書類は生前の所得税、消費税の確定申告書や、相続開始年の1月1日~相続開始日までに発生した所得に関係する書類です。

給与、年金の源泉徴収票や、不動産の譲渡契約書などです。

少額の年金のみで生活していた方などは、所得税の申告が不要であり、準確定申告も不要というケースも少なくありません。

また、毎年ご自身で確定申告されているような方は、基本的には通常の確定申告と同じように申告書を作成すればよいので、税理士に依頼しなくても出来てしまうかもしれません。

しかし、準確定申告の際に別途作成しなければならない書類などもあり、難しい処理も多々あります。

相続税の申告とセットで、準確定申告も税理士に依頼されるケースが多い印象を受けます。

税理士に依頼する場合は、申告内容の複雑さにもよりますが、最低100,000円~が相場かと思われます。

 

相続税の申告

最後に期限のある大きなイベントは相続税の申告です。

相続税の申告期限は、「相続の開始があったことを知った日(通常は、被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内」です。

必要書類は非常に多岐に渡り、相続手続きの中でも最も多くの書類を求められる手続きです。必要書類については、別途以下の記事で詳細を解説しておりますが、戸籍関係の情報はもちろん、被相続人の財産や債務に関するあらゆる書類を収集していく必要があります。

相続税申告に必要な書類を徹底解説!

なお、そもそも相続税の申告が不要な方もいます。

その方は相続税の申告書を提出する必要はありません。

相続税の申告が不要になるケースは以下の記事で詳細を解説しております。

相続税申告が不要なのはどんな場合?判断基準を解説!

また、相続税申告はやろうとすれば自分で行うことも可能です。

この場合、費用は発生しません。

相続税申告を自分でやる方法については、以下の記事で詳細を解説しております。

相続税申告は自分でできる?手続きの方法を解説!

 

しかし、相続財産の規模が多かったり、納税猶予や特例を適用する場合などは、税理士に依頼してしまった方が良いかと思います。

税理士に相続税申告を依頼する場合は、遺産額×0.5~1.0%に加えて、作業内容に応じて加算報酬、といった料金体系が相場かと思います。

相続税申告の税理士報酬の相場については、以下の記事で詳細を解説しておりますのでよろしければあわせてご参照ください。

相続税申告の税理士報酬はどのくらい?相場を解説!

 

財産、債務の名義変更

財産、債務の名義変更に関しては、特に明確な期限はありません。

相続税申告書を提出して一段落ついてから名義変更をされる方もいますし、遺産分割協議書が出来たタイミングで速やかに手続きされる方もいます。

財産や債務によって手続きは多種多様のため、預貯金口座や不動産といったよくあるケースの名義変更手続きの内容と費用について、以下でご紹介していきます。

※なお、不動産の相続登記の義務化が2024年4月1日から始まります。これにより、不動産の相続登記に関しては、相続発生後3年という手続期限が設けられることになりましたので、早めに登記手続きを行いましょう。

預貯金、証券口座の名義変更

金融機関によって必要書類も変わってきますが、大体どこの金融機関でも求められる必要書類は以下のとおりです。

法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本等は原則として提出不要になるかと思います。

また、費用についても大半の金融機関は無料で行ってくれるかと思います。

金融機関の窓口や郵送での手続きとなります。金融機関によって手続き方法は変わってきますので、手続きに入る前に金融機関に相談しましょう。

なお、司法書士、弁護士等に代理で手続きを依頼する場合には、最低でも1金融機関あたり30,000円~程度の報酬が発生する印象があります。

不動産の名義変更登記

相続が発生した場合には、不動産の登記簿謄本の所有者を変更する必要があります。

必要書類は以下の通りです。

法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本等は原則として提出不要になるかと思います。

自分で不動産の名義変更登記を行う場合に発生する費用は、登録免許税です。

登録免許税の金額は、不動産の固定資産税評価額×0.4%です。

なお、相続人以外の人へ遺贈によって不動産を取得した場合は、不動産の固定資産税評価額×2.0%になります。

固定資産税評価額が高い不動産を持っている場合は、登録免許税もそれなりの金額になります。固定資産評価証明書を取得した際に、簡単にでも登録免許税の金額を試算しておくと良いでしょう。

なお、登記の手続きはなかなか一般の人にはわかりづらく、司法書士に依頼してしまうケースも非常に多いです。

私のお客様のほとんどは、不動産の名義変更登記を司法書士に依頼しています。

司法書士に依頼する場合は、評価額や物件数などにもよるのですが、不動産1件あたり30,000円~+実費程度の報酬が発生する印象です。

 

まずどの専門家に相談すべきか

ご家族がお亡くなりになって相続手続きを進めていく場合、相続手続きごとに様々な専門家がいます。例えば、税務申告は税理士、遺産分割の紛争は弁護士、相続登記は司法書士、といったかたちです。

なお、各専門家の法律(税理士法、弁護士法など)で実施できる業務が明確に定められています。

税理士は代理で相続登記をしてはいけませんし、司法書士は代理で税務申告をしてはいけません。

そのため、最終的には様々な専門家とお付き合いをすることになる場合もあります。

ですが、最初の入り口はどの専門家に相談にいくべきか、悩みます。

私見であり、相続の状況にもよりますが、私はまず初めに税理士に相談したほうが良いと考えています。

相続の紛争や相続登記などの相続手続きは人によって発生しない場合もあります。しかし、準確定申告や相続税申告は多くの方が関係してくる相続手続きになります。

そのため、まずは一番発生しやすい相続手続きを担当している税理士にファーストコンタクトをとり、税務申告以外の手続きも必要なことが判明した場合は、税理士から弁護士、司法書士等の各種専門家をご紹介してもらうといった流れがスムーズかと思います。

税理士である弊所にファーストコンタクトをとり、そこから提携の弁護士、司法書士等をご紹介させていただく、といった流れが実際に多いです。

 

まとめ

この記事では、主な相続手続きの内容と、必要書類、スケジュールについてご紹介いたしました。

戸籍謄本や印鑑登録証明書などは複数の手続きで必要となってくるため、自治体窓口に行った際に必要な手続き分取得しておくとスムーズです。

また、法定相続情報一覧図を作成すれば、銀行解約や不動産登記等で大量の戸籍謄本等を持ち歩く必要はありません。したがって、相続手続きをスムーズに進めたい場合はまずは戸籍謄本等を収集し、法定相続情報一覧図の作成から進めていくとよいでしょう。

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