テレビのCMや新聞、銀行窓口などで、相続対策はお済みですか、といった言葉を目にする機会はありませんか。
年齢を重ねてくると、次世代のことも考え、相続対策が気になってくる方もいらっしゃるかと思います。
ただし、相続対策と一口にいっても、税金対策、争続対策、資金繰り対策など、色々な観点があります。
そこで、本記事では様々な観点からみた、相続対策の基本的な考えをご紹介していきたいと思います。
相続対策とは
相続対策というと、税金の対策を一番に思い浮かべる方が多いかと思います。
もちろん税金(相続税)の対策も重要なのですが、遺言書の作成や遺産分割を見据えた資産承継といった、税金以外の争族対策の観点も非常に重要です。
税金の対策をしても、遺産がそもそも相続人に渡らないとなると本末転倒だからです。
このように、相続対策と一口にいっても様々な切り口があります。そのため、自分がどのような観点の相続対策が必要なのか、まずは把握する必要があります。
相続対策の基本的な考え
相続対策といった場合、大きく分けて以下のどの観点の対策をしたいのかを考えます。
- 相続税の対策
- 遺産分割の対策
- 相続後の資金繰りの対策
以降で、それぞれの対策についてご紹介していきます。
相続税の対策
最もニーズがあるのが、この相続税の対策かと思います。税金は、少なければ少ないほど良いというのが誰しもの本音かと思います。
人が死亡すると、その死亡時点で所有している全ての財産に対して相続税が課税されます。相続税率は財産の金額によってかわりますが、最大で55%の税率となります。
相続税は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が用意されていますので、基礎控除以下の財産である場合には相続税対策は不要ですが、それ以外の場合は何かしらの対策を考えたほうが良いでしょう。
相続税対策の基本方針は以下の2つに分けられます。いずれの対策も、税法の仕組みを詳細に把握していないと実行が難しいため、ご興味がある場合は税理士に相談されることをおすすめいたします。
相続税対策1:生前贈与
相続税は相続開始時点の被相続人の財産に対して課税されます。ということは、相続開始時点までに被相続人の財産を減らしておけば、相続税を下げることができます。
そのため、生前贈与を活用して、相続開始時の財産を減らすことが相続税対策の基本方針の1つ目です。
ただし、生前贈与に対しては贈与税が課税されます。詳しくは以下の記事をご参照いただけますと幸いです。
そのため、以下に贈与税を低く抑えつつ、相続財産も減らしていくか、というところが重要になってきます。
そのためには、以下の記事でも解説しているように、贈与税の110万円の基礎控除や、住宅取得資金の非課税贈与といった特例制度を有効活用していく必要があります。
相続税対策2:財産評価額の引き下げ
相続税対策の基本方針の2つ目は、被相続人の財産評価額の引き下げです。
不動産や非上場株式をお持ちの場合には、相続時に税法で定められた複雑な計算方法で時価を計算します。
この時価の計算の仕組み上、不動産の利用状況を変更したり、会社の運営方法を変えたりすることで、時価を引き下げることが出来る場合があります。
また、現在多額の現預金を持っている方は、不動産に財産を組み替えて、財産評価額を引き下げると行った対策もあります。
遺産分割の対策
相続人間の相続争いを防止するための対策になります。
人が死亡すると、その人の相続人が被相続人の財産を相続します。
相続人が複数人いる場合には、誰がどの財産を相続するかどうかの争いが、裁判にまで発展するケースもあります。
遺産分割が完了しない状態が継続してしまうと、不動産などの財産が共有状態になってしまい、自由に処分や管理ができなくなります。
具体的な対策としては、遺言がメジャーです。遺言を書いておけば、基本的にその遺言の内容に基づいて粛々と遺産分割が行われます。
ただし、特定の相続人を優遇した遺言にしてしまうと、他の相続人から遺留分を主張される可能性があります。遺言の内容は慎重に決定し、生前に相続人全員の同意を得ておくことも必要でしょう。
また、遺産に不動産といった分割しづらい財産が多い場合には、予め生前に現金化しておくなど、遺産を分割しやすいかたちに組み替えておくことも争続対策には有効です。
相続後の資金繰りの対策
相続が発生すると、葬儀費用や被相続人の医療費などの支払が立て続けに来ますが、一番大きな出費は相続税でしょう。
相続税は、相続開始後10ヶ月以内に計算して、基本的には現金で一括納付する必要があります。財産規模にもよりますが、数百万円、数千万円といった税額も珍しくありません。
相続発生後の相続税の支払いのための資金繰り対策も重要です。
何億円もの財産を持っている資産家でも、財産のほとんどが不動産ですと、現金の納税資金がないということも想定されます。
そのため、生前に自身の相続税を概算しておき、相続税を支払うことができるだけの現金を不動産の売却などで残しておくことが重要です。
また、預金は十分あるけれども、遺産分割がまとまらないことから預金の解約ができず、納税資金が準備できないということもありえます。
この場合には、予め生命保険に入っておけば、生命保険は遺産分割が完了しなくとも生命保険金の受取人がすぐに受け取ることができるお金になりますので、納税資金の確保の対策として役立ちます。
まとめ
相続税、遺産分割、資金繰りの3つの観点から、相続対策をご紹介いたしました。
相続対策は、その人の財産や家庭状況によって千差万別です。税理士等の専門家に相談し、自分に合ったオーダーメイドの相続対策を一緒に考えていくことが重要かと思います。