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相続分の譲渡とは?メリットや注意点・相続放棄との違いを解説!

相続人間で争いがあったり、自分はあまり遺産には興味がない場合、自分の相続の権利を譲渡したいと考える人もいるかもしれません。

その場合には自分の相続分を譲渡することができます。また、似たような制度として、相続の権利を譲渡ではなく放棄する、相続放棄という制度もあります。

そこで今回は、相続分の譲渡の制度の解説や、相続放棄との違いをご紹介していきたいと思います。

 

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡とは、自分の法定相続分を他人に譲渡することです。

譲渡する相手は、他の相続人でも、赤の他人の第三者でも構いません。

相続分の譲渡を行うことにより、遺産を相続する権利を失いますので、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

譲渡は有償でも無償でも構いません。また、相続分の一部だけを譲渡することもできます。

譲渡は、遺産分割協議が固まる前に行う必要があります。

 

相続分の譲渡と相続放棄の違い

相続の権利を失うという意味で、相続分の譲渡と似た制度として、相続放棄があります。

しかし、両者では異なる点がいくつかありますので、以下でご紹介いたします。

債務の取り扱い

相続分の譲渡は、あくまで相続の権利を譲渡しているだけであって、相続人としての地位までは譲渡しません

そのため、被相続人が銀行借り入れや債務を有していた場合は、金融機関などの債権者から債務の支払いを求められた場合、相続人としてその要求に応じなければなりません。

一方で、相続放棄は、その相続人が初めから相続人ではなかったものとして取り扱われます。

そのため、債権者から被相続人の債務の負担を求められることはありません。

被相続人に多額の債務がある場合は、相続放棄を検討した方が良いでしょう。

手続き期限

相続分の譲渡は、遺産分割協議が固まるまでの間はいつでも行うことができます。

一方で、相続放棄は原則として相続開始があったことを知った日から3か月以内に行わなければなりません。

裁判所で手続きが必要かどうか

相続分の譲渡は、裁判所で手続きを行う必要はありません。

相続分譲渡証明書や相続分譲受通知書といった書面を当事者間で作成すれば、手続きが可能です。

一方で、相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要となります。

税務上の影響

相続分の譲渡の税務上の取り扱いですが、無償か有償か、誰に譲渡するか、によって以下のように取り扱いが変わってきます。

無償 有償
他の相続人へ譲渡 譲受人:相続税 譲渡人:相続税(譲渡対価分は控除)

譲受人:相続税

第三者へ譲渡 譲渡人:相続税

譲受人:贈与税

譲渡人:相続税(譲渡益が生じると譲渡所得税も)

 

一方で相続放棄の場合は、他の相続人の法定相続割合が増加し、その法定相続割合に基づいて通常通りの相続税計算を行っていきます。

相続分の譲渡の方が、税務上の取り扱いは複雑になるケースが多いです。

 

相続分の譲渡のメリット・デメリット

相続分の譲渡のメリットとデメリットを整理すると、以下の通りです。

メリット① 遺産分割手続きから解放される

相続分を譲渡すれば、割り当てられる遺産がなくなるため、遺産分割手続きから解放されることになります。

相続争いから抜け出したい人にとってはメリットです。

メリット② 特定の人に譲渡できる

相続分の譲渡は、他の相続人はもちろん、身近な第三者など、譲渡者が指定した人ならばどなたに対しても譲渡することができます。

これは相続放棄にはないメリットです。相続放棄を行うと、単に自分が相続権を失うだけになります。

その結果、自動的に、他の相続人の法定相続割合が増加したり、自分の次の世代への代襲相続などが法律に基づいて粛々と行われます。

一方で、相続分の譲渡の場合は、生前、被相続人の面倒を良く見てくれていた友人などの特定の人物に、相続権を譲り渡すことができます。

メリット③ お金が得られる

相続分の譲渡を有償で行う場合は、譲渡代金が自身の元に入ってきます。

相続放棄の場合には、単に自分の権利を放棄するだけなので、自身にお金が入ってくることはありません。

相続分を譲渡することができれば、自身の相続分に見合った財産を手にすることができるのがメリットです。

 

デメリット① 債務は残ったままになる

相続分の譲渡を行っても、相続人としての地位は失いません。

したがって、金融機関などの債権者が債務の弁済を求めてきた場合は、他の相続人と一緒に、債務の弁済要求に応じる必要があります。

被相続人に多額の債務があった場合にはデメリットになります。

相続放棄の場合は、相続人としての地位を失うので、債権者から債務の弁済を求められることはありません。

デメリット② 税務処理が複雑になる

上記でもご説明したように、相続分の譲渡の税務は、有償無償、譲渡先、によって取り扱いが変わってきて複雑になります。

税務も考えて譲渡対価や譲渡先を考えないと、思わぬ追徴課税のリスクが発生する可能性があります。

 

相続分の譲渡の手続き方法

相続分の譲渡は口頭でも可能ですが、後々の預金解約や相続登記手続きを考え、書面で行っておくことを強くお勧めいたします。

以下の2つの書類を作成して、譲渡の手続きを進めていきます。

  1. 相続分譲渡証明書
  2. 相続分譲渡通知書

①相続分譲渡証明書

相続分の譲渡人と譲受人との間で作成する書類です。

相続分を譲渡したことを証明する書類です。

様式について、法律上特に定められた様式はありません。

しかし、預金解約手続きや相続登記手続きで使用いたしますので、証明書にどのような項目を盛り込むべきか、金融機関や法務局へ事前に相談することをおすすめいたします。

②相続分譲渡通知書

他の相続人がいる場合には、相続分譲渡通知書も作成することをお勧めします。

相続分の譲渡があった場合は、各相続人の相続割合が変動したり、第三者が遺産分割協議に参加する可能性があります。

そのため、相続分の譲渡があった場合には、相続分譲渡通知書を作成することによって、他の相続人に速やかに相続分の譲渡があった事実を知らせ、遺産分割手続きが混乱しないようにしましょう。

こちらについても、特に法律上決まった様式はありません。

 

まとめ

遺産分割の手続きから解放されたい場合には、相続分の譲渡か、相続放棄という手段があります。

ただし、両者は、その効果や税務上の取り扱いなどで大きな違いがあります。

両者の相違点を比較して、どちらの手続きが自身のケースに合っているか、ご検討いただけると良いかと思います。

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