「戸籍謄本を取得したけど、税務署には原本を提出しないといけないの?」
「法務局で法定相続情報一覧図を作成したけど、戸籍謄本も提出する必要はあるの?」
相続税申告の添付書類の中に戸籍謄本がありますが、実際に準備を進めていると上記のような疑問が湧いてきます。
そこで今回は、相続税申告に戸籍謄本の添付が必要なケースや、コピーの添付でも良いのかどうか、といった点をご紹介していきます。
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相続税申告の必要書類
相続税申告には様々な添付書類が求められます。
添付書類の全体像については、以下の記事で詳細をご紹介しております。
その相続税の添付書類の中に、戸籍関係の書類があります。
戸籍関係の必要書類を列挙すると、以下の通りです。
書類名 | 内容 | 入手場所 |
被相続人の戸籍謄本 | 被相続人の出生から死亡までの流れが分かる戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本。相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの。 | 本籍地の市区町村役場 |
相続人全員の戸籍謄本、附票 | 本籍地の市区町村役場 | |
法定相続情報一覧図の写し | 作成している場合。法定相続情報一覧図の写しがあれば、基本的に戸籍謄本は不要。 | 法務局 |
戸籍謄本の種類
戸籍謄本は、「現戸籍」、「昭和改製原戸籍」、「平成改製原戸籍」、「除籍謄本」の4種類があります。
全体像を図にすると以下の通りです。
被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本が求められていますので、被相続人の年齢によっては「昭和改製原戸籍」まで遡り、「平成改製原戸籍」→「現在戸籍」→「除籍謄本」と辿っていく必要があります。
戸籍関係の書類はいずれも、本籍地の市区町村役場で取得ができます。郵送やコンビニ交付もできますが、被相続人関係の書類についてはコンビニ交付ができません。
それぞれの戸籍について簡単にご紹介いたします。
昭和改製原戸籍
戸籍は、戸籍制度や作成方法の改正により、内容やフォーマットが過去から何回か変わっています(改製)。
改製原戸籍とは、その改製が行われる”前”の戸籍のことを言います。
「“昭和”改製原戸籍」とは昭和32年改製前の戸籍、「“平成”改正原戸籍」とは平成6年改製前の戸籍を指します。
第2次世界対戦後の日本国憲法制定に伴い、昭和32年から、それまでは「家」を一つの単位として作成されていた戸籍から、「夫婦と同氏の子」を単位として構成する現在の戸籍に改製されました。
昭和改製原戸籍は、この改製が行われる前の、「家」を一つの単位として作成されていた戸籍です。
平成改製原戸籍
紙で作成されていた戸籍を、平成6年からコンピュータで記録することになりました。
これにより、書式が縦書きから横書きになるといった改製が行われました。
平成改製原戸籍は、この平成6年のコンピュータ化前、かつ、「夫婦と同氏の子」を単位として構成された戸籍となります。
(苫小牧市HPより引用)
現在戸籍
現在戸籍とは、平成6年のコンピュータ化後の現在使われている戸籍となります。
(苫小牧市HPより引用)
除籍謄本
現在の戸籍は「夫婦と同氏の子」を単位として構成されています。
したがって、子どもが結婚して配偶者と別の戸籍に移った場合には、子どもは親の戸籍から抜けていきます。戸籍の中の誰かが死亡や離縁した場合は、その人も戸籍から抜けていきます。
このように、戸籍から人が抜けていくと、最後は戸籍には誰もいなくなっています。
この誰もいなくなって空の状態の戸籍のことを「除籍謄本」といいます。
(苫小牧市HPより引用)
戸籍の附票
戸籍謄本とは似た名前の書類で、「戸籍の附票」という書類があります。
戸籍謄本には本籍地の情報しかありませんが、戸籍の附票には、その戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されています。
相続税申告の小規模宅地等の特例の検討のために、被相続人と相続人の同居関係や、過去の転居状況を確認するために使用します。
(苫小牧市HPより引用)
相続税申告の戸籍謄本はコピー提出で良い
相続税申告について、以前は戸籍謄本の原本提出が求められていたのですが、現在はコピーの提出で問題ありません。
相続税申告の添付書類は、印鑑登録証明書を除き、基本的にコピー提出が認められています。
原本を提出してしまうと、銀行解約などの相続手続きで使用できなくなってしまうので、コピーを提出するようにしましょう。
戸籍謄本の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」でもOK
相続税申告では、戸籍謄本の代わりに「法定相続情報一覧図の写し」を提出するかたちでも問題ありません。「法定相続情報一覧図の写し」もコピー提出でOKです。
「法定相続情報一覧図の写し」とは
法定相続情報一覧図とは、戸籍謄本をもとに作成した家族関係図です。
戸籍謄本や被相続人の住民票除票をもとに、法定相続人を一覧にした図を作成して法務局に提出します。
その後、法務局の登記官による内容のチェックが終わったら手続きは完了です。
法定相続情報一覧図は以下のような書類になります。
(法務局HPより引用)
原本は法務局で保管され、その写しである「法定相続情報一覧図の写し」は必要部数を無料で発行してもらえます。
「法定相続情報一覧図の写し」があれば、大量の戸籍を持ち歩かなくてもこれ一枚で、相続税申告はもちろん、銀行解約などの相続手続きも対応できます。
私のお客様でもほとんどの方が法定相続情報一覧図を作成しています。
「法定相続情報一覧図の写し」なら全て認められるわけではない
「法定相続情報一覧図の写し」なら、相続税の添付書類として何でも認められるかというと、実はそうではありません。
まず、法定相続情報一覧図には「図形式」と「列挙形式」という2つの形式があるのですが、相続税の添付書類として認められるのは「図形式」であることが必要です。「列挙形式」では相続人の法定相続分が確認できない場合があることが理由です。
また、法定相続情報一覧図について、子の続柄が、実子又は養子のいずれであるかがわかるように記載されたものに限る、とされています。
子の続柄が単に「子」と記載されたものは添付書類として認められません。
以下が添付書類として認められる「法定相続情報一覧図の写し」の例です。
(国税庁 「相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました」)
「法定相続情報一覧図の写し」も万能ではない
「法定相続情報一覧図の写し」はたしかに便利な書類ですが、万能ではありません。
例えば、相続人に相続放棄があった場合には、相続放棄の情報は法定相続情報一覧図に反映されません。
また、私が相続税申告を行う際には、法定相続情報一覧図があったとしても、戸籍関係書類もあわせてご準備いただくよう、お伝えしております。
法定相続情報一覧図では、被相続人と相続人の間の関係しか分かりません。
例えば、相次相続控除の検討をするとき、戸籍関係書類があれば先代や配偶者がいつお亡くなりになっていたかの情報まで掴むことができ、相続税の網羅的な検討ができるためです。
「法定相続情報一覧図の写し」がお手元にあるということは、戸籍関係書類もお手元にあるはずです。
したがって、「法定相続情報一覧図の写し」を作成したからといって、戸籍関係書類は廃棄しないようにしましょう。
複雑な場合は司法書士等の専門家に
妻と子どもだけの相続、といった単純な相続ならば、自分でも戸籍謄本の収集や法定相続情報一覧図の作成は出来てしまうかと思います。
一方で、相続人が兄弟姉妹であったり、相続人の数が多いといった状況になると、戸籍を請求する市区町村役場を調べるだけでも一苦労です。
そのようなケースでは司法書士等の専門家に、戸籍の収集から法定相続情報一覧図の作成まで依頼してしまうのも選択肢の1つです。
司法書士等の専門家は、相続人の委任状があれば代理で住民票や戸籍の収集、法定相続情報一覧図の作成ができます。
戸籍収集等の専門家報酬はそこまで高額ではないですし、私のお客様でも提携の司法書士にご依頼される方がほとんどです。
まとめ
相続税申告において、「法定相続情報一覧図の写し」があれば戸籍謄本の提出は不要です。
ただし、相続税の特例の検討のために、戸籍謄本も手元に残しておいたほうが良いかと思います。
また、戸籍謄本、法定相続情報一覧図の写し、のいずれもコピー提出で問題ありません。
現在、相続税申告の添付書類は、印鑑登録証明書を除き、基本的にはコピー提出が認められているからです。
コピー提出が可能な書類は積極的にコピーで対応し、戸籍等の無駄な取得手数料が発生しないように相続手続きを進めていきましょう。