「相続税を申告したが、その後に預金などの新たな財産が見つかってしまった。」
相続税の申告は10ヶ月という期限があるため、期限までに財産の情報を集める時間的余裕がない場合には、こういったことも起こり得ます。
今回は相続税の申告後に新たな財産が見つかった場合の対応をご紹介いたします。
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相続税の申告期限“前“に新たな財産を発見した場合
相続税の申告期限前に新たな財産を発見した場合は、修正申告ではなく「訂正申告」という扱いになります。
まだ、法定申告期限内であるため、初めに提出した相続税申告書を訂正できるからです。訂正申告の場合は延滞税等のペナルティはなく、結果として訂正分の差額の相続税を納めるだけで大丈夫です。
相続税申告書を再度新たな財産を反映した状態で作成しなおして、申告期限までに税務署に提出しましょう。
なお、税務署は申告期限内に複数の相続税申告書が提出されると、どちらを最終版として受理すれば良いのか判断に迷います。
そのため、訂正申告を行う際は税務署の窓口や電話等で、訂正申告の方を最終的な申告書として受理するよう、お伝えしたほうが良いかと思います。
また、遺産分割協議書についても、新たに発見された財産の相続先についての条項がない場合には、遺産分割協議書の追記もしくは追加作成の対応が必要になります。
相続税の申告期限“後“に新たな財産を発見した場合
相続税の申告期限後に新たな財産が見つかった場合には、「修正申告」を行います。
以下で、修正申告の内容や提出期限等についてご紹介いたします。
修正申告とは
修正申告とは、法定申告期限後に、既に提出した相続税申告の金額に誤りがあった場合で、申告をした相続税額が実際より少なかった場合に、これらの金額を正しい額に訂正するために提出する申告書です。
なお、以降では、法定申告期限後に新たな財産が発見された場合の、修正申告を前提としてお話していきます。
修正申告の期限
修正申告の期限は、法定申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)から5年以内です。
ただし、意図的に財産を隠しているなどの場合は、期限が7年以内に伸びます。
修正申告は上記の期限内でしたら、いつでも行うことが可能です。
また、修正申告により追加で納める相続税額の納期限は、修正申告書を提出した日となります。
修正申告を行う場合は、申告書の提出前に納税を行っておくと良いでしょう。
相続税の修正申告書の様式
相続税の修正申告書の様式は以下の国税庁のページや、税務署でも入手できます。
(国税庁 相続税の申告書等の様式一覧(令和4年分用))
様々な様式がありますが、必ず提出が必要となるのは第1表と第15表です。
第1表は修正前の当初申告と、修正申告の金額を対比するような作りになっています。
- 第1表 相続税の修正申告書
- 第15表 相続財産の種類別価額表(修正申告用)
他にも配偶者控除や小規模宅地等の特例を適用する場合には、適宜対応する様式を提出する必要があります。
修正申告のペナルティ
修正申告を行う場合、当初申告と修正申告との差額の税額を納めるだけで良いかというと、そうではありません。
差額の税額のほかに、以下のペナルティが課せられます。
ペナルティ | 金額 |
過少申告加算税 | 納付すべき相続税額に対して、50万円までは10%、50万円を超える部分は15%を、相続税額に上乗せして支払います。
なお、税務調査を受ける前に自主的に修正申告を行ったケースなど一定の要件を満たす場合には、過少申告加算税が発生しないといった特例もあります。 |
延滞税 | 納付期限の翌日から2ヶ月以内は年率7.3%、2ヶ月を経過した日以降は年率14.6%となります。
ただし、延滞税の税率は特例税率が設けられています。特例税率は年度ごとに異なります。 ご参考までに、納税を延滞している期間が令和4年1月1日から令和4年12月31日の間の場合、延滞税の税率は、納付期限の翌日から2ヶ月以内は年率2.4%、2ヶ月を経過した日以降は年率8.7%に軽減されます。 |
重加算税 | 相当悪質なケースに課税されるペナルティのため、財産の計上漏れがあったからといぅて必ず課税されるものではありません。
また、上記の過少申告加算税の代わりに課税されるペナルティであるため、過少申告加算税と重加算税が両方課税されるということはありません。 税率は以下の通りです。 >申告・納税はしていたが過少申告:35% >意図的に申告・納税をしていない:40% |
税務調査の通知前に修正申告を自主的に行えば、過少申告加算税は発生しないという特典があります。
当初申告後の早い時期に修正申告を行えば、延滞税の金額も安くなります。
修正申告というとマイナスのイメージがありますが、新たな財産が発見された場合には、速やかに自主的な修正申告を行うことでお得になります。
遺産分割協議書の対応
遺産分割協議書に、新たに発見された財産の相続先を决定するような条項がない場合には、遺産分割協議書の追記、追加作成の対応も必要となります。
新たな財産が見つかっても黙っていれば税務署にバレない?
たまに、新たな財産が見つかっても、黙っていれば税務署にバレないんじゃないの、と仰る方がいます。
相続税には時効があり、申告期限から5年、悪質な財産隠し等がある場合は7年となっています。
時効が過ぎるまで隠し通せれば、新たな財産に対して課税はされません。
しかし、税務署は預貯金や不動産等の財産について、金融機関や自治体などと連携して、情報を様々な場所から収集しています。
以下は令和3事務年度の国税庁の相続税の税務調査実績ですが、全体の87%もの税務調査で、財産の計上漏れなどの指摘が行われています。
(国税庁 令和3事務年度における相続税の調査等の状況 より抜粋)
税務調査において、不動産の評価方法などの判断を要する論点は対抗ができるのですが、そもそも財産の計上が丸々抜けていたというのは、一切反論のしようがありません。
また、税務調査前に自主的に修正申告すればペナルティは軽減されますが、税務調査後に財産の計上漏れを指摘されると、最悪のケースは重加算税といった非常に重いペナルティを課せられる場合もあります。
したがって、バレなければいいやと思わずに、新たな財産が発見された場合には、速やかに訂正申告や修正申告を行ったほうが良いでしょう。
まとめ
相続税を申告した後に新たな財産が見つかった場合、申告期限“前”は「訂正申告」、申告期限“後”は「修正申告」で対応することになります。
新たな財産を黙っていても税務調査でバレる確率が高いので、素直に当初申告を修正する手続きを行ったほうが良いでしょう。
それが結果として、加算税等のペナルティ軽減といった自分自身のメリットに繋がる行動になります。