相続税申告に必要な書類を徹底解説!

相続税申告で相続人が行う作業の中で、重要かつ最も時間がかかる作業が必要書類の収集です。

相続人が多かったり、財産、債務の種類が多ければ多いほど、必要書類の数も多くなってきます。

税理士に申告書の作成を依頼する場合でも、必要書類がなければ申告書の作成は行えません。

相続税には申告期限があるため、申告期限に遅れてペナルティを受けないためにも、必要書類の準備は相続発生後に速やかに始める必要があります。

この記事では、相続税申告に必要な書類について、書類名や入手場所などを解説していきます。

 

相続税申告の必要書類

相続税申告の必要書類について、実際に弊所がお客様にご依頼している書類をベースにご紹介していきます。

他にも必要書類が出てくるケースがあるのですが、一般的な必要書類は網羅されているかと思います。

なお、以下の画像はある1人の被相続人の方の相続税申告書とその添付書類になります。

辞書2~3冊分くらいの厚みがあります。ここまでの量になるケースはそう多くはないですが、それでも最低限必要になる書類はそれなりの量になりますので、申告期限に間に合うように早い時期から相続税申告の必要書類の収集を進めていきましょう。

被相続人に関する書類

被相続人に関する書類となります。

書類名 内容 入手場所
被相続人の戸籍謄本 被相続人の出生から死亡までの流れが分かる戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本。相続開始の日から10日を経過した日以後に作成されたもの。 本籍地の市区町村役場
被相続人の過去の所得税確定申告書 過去3年分。紛失した場合は相続人から委任状を頂き、税理士が代理で税務署に控えを閲覧に行くことも可能です。 自宅、税務署
被相続人の財産債務調書、国外財産調書 過去3年分。紛失した場合は相続人から委任状を頂き、税理士が代理で税務署に控えを閲覧に行くことも可能です。 自宅、税務署
前回の相続税申告書 被相続人が過去10年以内に相続を受けた際の相続税申告書 自宅、税務署
被相続人の略歴 被相続人の出生から死亡時までの略歴を可能な範囲で記載 相続人が作成

戸籍関係は自身で請求するのが面倒な場合には、司法書士に依頼してしまうのも良いかと思います。

なお、法務局が発行する法定相続情報一覧図があれば、厳密には戸籍の提出は不要です。

しかし、戸籍でしか読み取れない情報もあり、弊所では法定相続情報一覧図がある場合においても、戸籍のご提出をご依頼しております。

相続人に関する書類

相続人に関する必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
相続人全員の戸籍謄本、附票   本籍地の市区町村役場
法定相続情報一覧図 作成している場合 法務局
相続人全員のマイナンバーカード(又は通知書)と身分証明書   自宅
相続人全員の住民票   住所地の市区町村役場
特別代理人選任の審判の証明書 相続人の中に未成年者がいる場合 家庭裁判所
成年後見登記事項証明書 相続人の中に成年被後見人がいる場合 家庭裁判所
身体障害者手帳等 相続人の中に障がい者がいる場合  
相続放棄申述受理証明書 相続人の中に相続放棄をした人がいる場合 家庭裁判所
相続欠格事由の存否 相続人の中に相続欠格者がいる場合はお知らせください  
家庭裁判所の審判・調停又は遺言書(廃除に関する記載) 相続人の中に被廃除者がいる場合 家庭裁判所

こちらも戸籍や住民票等の入手が面倒な場合には、司法書士に依頼してしまうのも良いかと思います。

 相続財産の分割等に関する書類

相続財産の分割や遺言、生前贈与に関する必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
遺言公正証書又は検認を受けた遺言書   公証人役場等
遺産分割協議書 遺言がない、又は遺言に記載のない遺産を分割した場合 相続人が作成
相続人全員の印鑑証明書

※原本

遺産分割協議書を作成した場合のみ。 住所地の市区町村役場
贈与契約書 生前贈与、死因贈与がある場合 自宅
過去の贈与税申告書 過去7年分。

被相続人が贈与者の申告。

紛失した場合は相続人から委任状を頂き、税理士が代理で税務署に控えを閲覧に行くことも可能です。

自宅
過去の相続時精算課税の贈与税申告書 相続時精算課税適用開始からの全ての申告。被相続人が贈与者の申告。

紛失した場合は相続人から委任状を頂き、税理士が代理で税務署に控えを閲覧に行くことも可能です。

自宅

 

相続財産等に関する書類

不動産関係

不動産の評価に関する必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
固定資産税納税通知書 被相続人の住所地以外、国外の不動産、先代の相続未登記不動産も含む。以下同様。 不動産所在地の市区町村役場
固定資産税評価証明書  
名寄帳  
不動産登記簿謄本   法務局
公図   法務局
地積測量図 建物建築時などに作成しているものがあれば。  
住宅地図 その他、不動産の位置関係が分かる資料。  
不動産の賃貸借契約書 被相続人が借主、貸主、いずれの契約もお願いします 不動産管理会社
相続開始日時点の入居率が分かる資料 不動産管理会社作成のレントロールなど 不動産管理会社
借地権の使用貸借に関する確認書 過去に税務署に提出していれば。

紛失した場合は相続人から委任状を頂き、税理士が代理で税務署に控えを閲覧に行くことも可能です。

 
借地権者の地位に変更がない旨の申出書  
土地の無償返還に関する届出書  
相当の地代の改定方法に関する届出書  

不動産の評価は様々な情報を駆使して行う必要があり、必要書類も多くなってきます。

なお、被相続人の住所地以外、国外の不動産、先代の相続未登記不動産に関する資料も入手を忘れずにお願いいたします。

申告で漏れやすい資産となっております。

現預金関係

現預金に関する必要書類です。

書類名 内容 入手場所
相続開始日現在の預貯金の残高証明書 定期預金・定期積金については解約利息も記載してもらう。

相続開始日ではなく、残高証明を請求した日の証明を取得してしまうミスが多いので注意。

金融機関
預貯金通帳のコピー 相続開始日から過去10年間。

被相続人及び相続人のもの。

通帳を破棄している場合は、金融機関窓口で取引明細を発行してもらえる。

自宅、金融機関
通帳名義は相続人や孫だが、実質は被相続人が管理していた通帳 いわゆる名義預金と呼ばれるものです。 自宅、金融機関
貸金庫内の現金、株券等が分かる写真、資料   自宅、金融機関
相続開始日現在に財布、自宅に保管されていた手許現金の金額情報   自宅

現預金は税務調査でも重点調査項目であり、過去10年程度の預金の履歴はチェックされます。

したがって、相続税申告を作成する際にも、過去10年程度の通帳はご準備いただきます。

なお、被相続人の通帳だけではなく、相続人の通帳もご依頼しております。

これは、税務調査において、被相続人から相続人へ贈与やお金の預け入れがなかったか、などの確認を、被相続人と相続人の通帳を照らし合わせて行われるためです。

相続税申告書の作成段階で、予め被相続人と相続人の間のお金のやりとりを精査します。

また、漏れやすい財産として、銀行の貸金庫に保管している現金や有価証券が挙げられます。

そのため、相続人の方には貸金庫の契約の有無や、貸金庫の中の財産をヒアリングさせていただきます。

 有価証券関係

有価証券に関する必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
相続開始日時点の株式、債券等の残高証明書 単元未満株を保有している場合は、証券会社に加えて、単元未満株を管理している信託銀行にも依頼 証券会社
証券口座の取引明細 過去遡ることができる期間まで 証券会社
株券、債券、出資証券等の写し   自宅、貸金庫
非上場株式の法人の決算書、確定申告書、内訳書 過去3年分 株式の発行会社

過去に会社分割や合併をしている会社の株式などを保有している場合は、単元未満の株式が発生している可能性があります。

単元未満株式は証券会社の残高証明書に記載されないため、漏れが生じやすく注意が必要です。

また、非上場株式を保有している場合は、上場株式とは異なり相続税の評価が非常に複雑になります。

決算書や申告書をもとに、法人が保有している財産、負債を全て評価して株価を計算します。

 保険関係

保険関係の必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
保険証券の写し 被相続人が被保険者である保険。

被相続人が実際に保険料を支払っていた保険。

自宅、保険会社
受取保険金の明細 生命保険金の明細 保険会社
相続開始日現在の解約返戻金証明書 被相続人が被保険者ではないが保険料を支払っていた保険。

損害保険、JA建物更生共済など。

保険会社

漏れやすいのが、被相続人が被保険者、契約者ではないが、被保険者が保険料を負担していた保険です。

これは名義保険などとも呼ばれ、保険証券上に被相続人の名前が出てこないケースもあるのですが、税務上は保険料の負担者が保険契約者とみなされるため、調査が必要となってきます。

また、損害保険(特にJA建物更生共済)の解約返戻金も漏れやすい財産です。

損害保険のため解約返戻金が生じないと考えてしまう方もいるのですが、JA建物更生共済は特殊で解約返戻金が生じるケースが多いです。

なお、被相続人がどの保険に入っていたか分からない場合には、「生命保険契約照会制度」を活用することもご検討ください。

一部の保険契約は対象にならないのですが、被相続人が契約していた各社の保険契約を一括で照会することが可能です。

政府広報オンラインURL

その他財産関係

その他の財産関係の必要書類です。

書類名 内容 入手場所
死亡退職金の支払調書 勤務先や小規模企業共済の解約など 勤務先など
金銭消費貸借契約書、借用書 誰かにお金を貸していた場合  
車検証の写し 自動車を保有していた場合  
ゴルフ、リゾート会員権の写し    
貴金属、書画骨董の鑑定書 高価な貴金属、書画骨董を保有している場合 鑑定会社
造園業者の見積書 庭園設備がある場合 造園業者
その他で金銭価値がある財産の資料 暗号資産、高価なアンティーク品など  

最近徐々に増えてきているのが暗号資産の相続です。

被相続人が保有していたウォレットのログイン情報を把握しておかないと、暗号資産の正確な種類、数量が把握できません。

他のIT関係の財産(ネット銀行など)もそうですが、IT関係のログイン情報などは生前に一覧にしてまとめておき、相続人が困らない状況にしておきたいところです。

葬儀費用、債務関係

葬儀費用、債務関係の必要書類となります。

書類名 内容 入手場所
相続開始日現在の借入金の残高証明書 未払利息も含む 金融機関
納税通知書 住民税、固定資産税、事業税、国民健康保険税などで相続開始日現在未納のもの 市区町村役場など
相続開始後に支払った請求書、領収書 入院代、介護料金、水道光熱費など  
葬式費用の請求書    
お布施、心付けなどの金額情報 領収書が出ない場合はメモなどで問題ありません  

お布施、心付けなどは領収書が出ないケースがほとんどであるため、金額や支払先、日付をメモ書きで残しておいていただければと思います。

 

相続税の特例適用

相続税の有利な特例を適用するための必要書類です。

以下の他にも納税猶予など様々な特例があるのですが、今回は実務上頻出の配偶者控除と小規模宅地等の特例に絞って必要書類をお示しいたします。

配偶者控除

書類名 内容 入手場所
申告期限3年後以内の分割見込み書 申告期限時点で遺産が未分割の場合に作成 相続人が作成

小規模宅等の特例

書類名 内容 入手場所
申告期限3年後以内の分割見込み書 申告期限時点で遺産が未分割の場合に作成 相続人が作成
不動産を取得した者の住民票の写し 相続開始の日以後に作成されたもの 居住地の市区町村役場
老人ホームの契約書など入居関係書類 被相続人が老人ホームに入居していた場合に小規模宅地等の特例を使用する場合 老人ホーム運営会社
介護保険証等のコピー 被相続人が老人ホームに入居していた場合に小規模宅地等の特例を使用する場合。

要介護状態であることが分かる資料。

市区町村役場など

小規模宅地等の特例は、様々な種類があり、種類によっては上記以外の書類も必要になってきます。

 

まとめ

相続税申告の必要書類について、一般的なものをご紹介いたしました。

上記の他にも、個別の状況によって追加の書類が必要になるケースがあります。

相続人の方が日中お勤めの場合には、市区町村役場などに行く時間もなかなか取りづらいかと思います。

そうすると、相続税の申告期限である10か月という期間はあっという間に過ぎてしまいます。

申告期限後の申告となってしまうと、罰金や特例の不適用などの重いペナルティが待ち受けています。

戸籍や住民票、残高証明の取得などは、司法書士等の専門家に代理で取得を依頼することが可能です。専門家に依頼できる作業は依頼してしまうのも、申告期限内に相続税申告を完了するための1つの方法かと思います。

皆様がこの記事を活用して、相続税申告の必要書類をスムーズに収集し、相続税の期限内申告を達成できることを願っております。

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