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相続税申告は自分でできる?手続きの方法や自分で行う場合のメリットデメリットを解説!

税理士や司法書士などの専門家に依頼すると報酬がかかってしまうため、相続税申告を自分でやりたいと考える方もいるでしょう。

ご安心ください。もちろん、相続税申告を自分で行うことは可能です。

国税庁の令和3年事務年度の調査によれば、相続税申告における税理士の関与割合は約86%となっており、実際に10人に1~2人程度は相続税申告を自分で行っています。

ただし、中には専門家に依頼したほうが良いようなケースもあります。

そこでこの記事では、相続税申告を自分で行う場合の手順や、相続税申告を自分で行うメリット・デメリットなどについてご紹介していきたいと思います。

 

相続税申告を自分で行う手順

相続税申告を自分で行うと決めたら、以下の手順で申告書を作成してみましょう。

  1. 申告期限・納付期限の把握
  2. 法定相続人の確定
  3. 基礎控除額の算定
  4. 相続財産、債務の集計
  5. 相続税申告が不要か判断
  6. 必要書類の収集
  7. 遺産分割協議書を作成する
  8. 相続税申告書の様式を入手する
  9. 相続税申告書を作成する
  10. 申告書の提出、納税

なお、国税庁が公表している「相続税の申告のしかた」という冊子がよく出来ており、私もたまに参考にしています。

こちらも適宜ご参照いただくと良いかと思います。以下からダウンロードできます。

国税庁ホームページ

①申告期限・納付期限の把握

まずは自分がいつまでに相続税申告を行わなければならないか、タイムリミットを確認しましょう。

相続税の申告期限は、「相続の開始があったことを知った日(通常は、被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内」です。

相続税の納付も同じ期限までに行う必要があります。

申告期限・納付期限については以下の記事で詳しくご紹介しておりますので、あわせてご参照ください。

相続税の申告期限は10か月!期限が過ぎてしまうとどうなる?

②法定相続人の確定

被相続人や相続人の戸籍等を収集し、法定相続人が誰かを確定させます。

ここを間違えてしまうと、この後の遺産分割や相続税の計算も全て間違ってしまうため、重要な作業となります。

相続人が少ない場合には間違えるケースは少ないですが、代襲相続が発生していたり、養子いる場合などには注意が必要です。

③基礎控除額の算定

法定相続人が確定したら、相続税の基礎控除額を以下の計算式で算定します。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続放棄がなかったものとして法定相続人の数を集計する点や、養子の数の算入方法の制限などに注意しましょう。

④相続財産、債務の集計

次に、相続財産と債務の金額を集計します。

集計の対象となる主な財産と債務は以下の通りです。

財産 債務
  • 現預金
  • 土地、建物、借地権
  • 株式、国債、投資信託
  • 骨董品、宝石
  • 車両
  • 貸付金
  • 死亡保険金、死亡退職金(非課税枠あり)
  • 相続開始前3年以内の贈与財産(令和6年1月1日以降の贈与は相続開始前7年以内)
  • 借入金
  • 未納固定資産税、住民税
  • 未払入院代、介護費用
  • 未払水道光熱費
  • 葬儀費用、お布施

例えば、相続開始前3年以内の贈与財産など、相続税法独特の考えで集計される財産もありますので、集計漏れがないように注意が必要です。

⑤相続税申告が不要か判断

集計した財産から債務を引いた金額が、基礎控除額を下回る場合は、相続税の申告は不要です。

また、集計した財産から債務を引いた金額が、基礎控除額を上回る場合でも、申告要件のない税額控除で相続税額が0円になる場合には、やはり相続税の申告は不要です。

相続税申告が不要なケースは以下の記事でご紹介しておりますので、あわせてご参照ください。

相続税申告が不要なのはどんな場合?判断基準を解説!

基礎控除額や、申告要件のない税額控除を引いてもなお相続税額が発生する場合は相続税申告が必要です。

次のステップに進みましょう。

⑥必要書類の収集

戸籍や住民票などの必要書類を収集します。

必要書類は以下の記事でご紹介しておりますので、あわせてご参照ください。

相続税申告に必要な書類を徹底解説!

多くの資料が必要となってきますので、申告期限に間に合うように収集を進めていきましょう。

⑦遺産分割協議書を作成する

相続人が複数人いたり、遺言に記載のない財産があった場合には、遺産分割協議書を作成しましょう。

⑧相続税申告書の様式を入手する

次に、相続税の申告書の様式を入手しましょう。

申告書の様式は以下のWeb上で公開されています。

国税庁ホームページ

また、最寄りの税務署の窓口でも様式は入手することが可能です。

⑨相続税申告書を作成する

様式を入手したら、集計した財産や債務の情報などを記入していきましょう。

どの欄に何を書けば良いのかわからない場合は、以下の「相続税の申告のしかた」に記載例がありますので、ご参考にしていただければと思います。

国税庁ホームページ

⑩申告書の提出、納税

申告書が完成したら、税務署に申告書を提出します。

税務署窓口での提出、郵送提出、またはe-Taxによる電子申告の中から好きな方法を選択できます。

また、納税も納付期限までに済ませます。納税は相続人ごとに行います。

納税も、紙の納付書(税務署窓口で入手できます)か、クレジットカード納付が選択できます。

 

相続税申告を自分で行う場合のメリット・デメリット

相続税申告を自分で行う場合のメリット・デメリットを以下にまとめてみました。

メリット デメリット
  • 税理士等の専門家への報酬が発生しない
  • 時間と手間が多くかかる
  • 相続税の過大納付のリスク
  • 税務調査の確率が高くなる

 

メリット:税理士等への専門家の報酬が発生しない

おそらく相続税申告を自分でやってみようという方の多くが、このメリットに魅力を感じているかと思います。

専門家に依頼する場合、1つの相続に関して、最低でも相続税申告作成の税理士報酬と、戸籍等の収集、遺産分割協議書の作成などの司法書士報酬が発生します。

財産や税額の規模も大きくなりがちでリスクの高い業務であるため、専門家報酬_も自然と高くなってきます。

相続人の中には事業などを行っておらず、普段は税理士等の専門家と接触する機会がない方も多いかと思います。

そのような場合、書類等の作成のために専門家に業務を依頼するということに馴染みがなく、専門家への報酬はなるべく抑えたいと考えるのも最もだと思います。

相続税申告を自分でやれば、専門家への報酬は一切発生しません。

デメリット:時間と手間が多くかかる

相続税は税理士の中でも全く対応していない人がいるほど、難しい税金です。

私のお客様で相続税申告を自分で行おうとして税務署に質問に行ったが、自分で申告するのは大変なので税理士にご依頼ください、と門前払いされてしまった事例もいくつか聞きました。

相続税申告を自分で行うためには、相続税法の理解や、大量の必要書類の収集を行う必要があり、時間と手間が多くかかることがデメリットです。

デメリット:相続税の過大納付のリスク

相続税の計算上、控除や評価の減額など、様々な特例が用意されています。

しかし、これらの特例の中には適用要件や手続きが複雑なものもあり、自分で相続税申告を行う場合には使えたはずの特例の適用が漏れる可能性があります。

また、相続財産の評価、特に不動産は評価がかなり難しく、専門家である税理士ですら、税理士によって評価額に数百万円、数千万円の差が生じることがあります。

相続税を過大に納める分には税務署は何も文句はありませんが、納税者にとっては納税で出ていくお金が多くなってしまうことはデメリットです。

デメリット:税務調査の確率が高くなる

税理士が納税者の代理で相続税申告書の作成を行う場合は、税務代理権限証書の提出や、相続税申告書に担当税理士の署名がなされます。

税務署としては、専門家である税理士が署名している申告書ならば、一定水準のレベルで作成されているだろうという印象を持つ可能性が高いです。

一方で、税理士の署名がない申告書は、専門家をつけずに自分で相続税申告書を作成したということです。

そのため、税務調査に入れば指摘事項、追徴課税が発生する可能性が高く、税理士が署名している申告書よりも、税務署にとってはおいしいターゲットになります。

もちろん、自分で相続税申告書をしっかり作成出来る方もいるかと思いますが、税理士の署名がある申告書と比べると、税務調査の確率はやはり高くなる傾向にあるかと思います。

 

相続税申告を自分で出来るケース

以下のようなケースならば、相続税申告を自分で作成できる可能性があります。

一方で、以下のケースに当てはまらないような場合には、税理士に申告を依頼したほうが良いかもしれません。

財産の中に不動産がなかった場合

相続税の計算でも特に難しいのが土地、建物などの不動産の評価です。

一方で、不動産の評価がない場合には、預金残高の集計や生命保険金の集計など、入手した資料から単純に金額を集計するような作業になるため、相続税申告を自分で作成できる可能性が高くなります。

親族との間に金銭、財産のやり取りがなかった場合

税務調査でよく問題になるのが、子どもや孫名義で作った名義預金や、被相続人から相続人への生前贈与です。

一方で、被相続人が親族との間で金銭や財産のやり取りをしないような方だった場合には、名義預金や生前贈与の検討は基本的に不要となりますので、相続税申告を自分で作成できる可能性が高くなります。

相続人が1人や2人など少ない場合

相続人が多くなると、遺産分割案の調整や、相続税の計算上有利な遺産分割をシミュレーションしたりなど、相続税申告のための作業も多くなってきます。

一方で、相続人が1人や2人など少ない場合には、被相続人の財産や債務の集計に注力できるため、相続税申告を自分で作成できる可能性が高くなります。

相続人が日中に時間を多く取れる場合

相続税申告にあたっては、役所や銀行等から多くの資料を入手する必要があります。

また、相続税の計算も大体の方は馴染みがないと思いますので、その勉強のためにも多くの時間を使うかと思われます。

ただし、時間は無限にあるわけではなく、相続税には10か月という申告期限が設定されています。

そのため、既に退職されていたりなど、日中に相続税申告のための作業に時間を多くとれる相続人がいる場合には、相続税申告を自分で作成できる可能性が高くなります。

 

まとめ

今はネットや書籍も充実しており、手順を踏んでいけば相続税申告を自分で行うことも可能です。

しかし、財産の状況や相続関係などからみて、税理士に依頼した方が良いケースというのも存在します。

相続税申告を自分で行う場合の手順の把握や、そもそも相続税申告を自分で行うべきかどうかの判断について、この記事がお役に立てれば幸いです。

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