賃上げ促進税制に思う
国は、国民のお給料を上げて経済を回復させようと頑張っています。
その1つの施策として、賃上げ税制(以前は所得拡大税制とも)があります。
賃上げ税制は、企業が前期から賃上げしたら、その賃上げ分の一部を法人税額から税額控除してあげようという制度です。
ですが、お客様の反応などを伺っていると、賃上げ税制を適用するために賃上げを行おうという企業はほとんど聞きません。
結果的に、賃上げ税制が適用できるケースはありますが、賃上げ税制の適用を当初から目指して賃上げというのは、経営判断としてなかなか難しいのだと思います。
基本給、月給というのは、1度上げてしまうと、余程のことがない限りは下げることができません。したがって、ある期で賃上げをして税額控除をしても、将来に渡って賃上げによる人件費の負担増加が企業にのしかかるわけです。
さらに、もう1つ忘れてはならないのが、社会保険料の負担です。給料を上げるということは、それに連動して社会保険料も増加します。社会保険料は、利益が出ていなくても払わなければならない支出です。正直申し上げますと、大半の中小企業では、法人税や消費税よりも、社会保険料の負担額の方がよっぽど大きいと思います。
これらを勘案すると、経営判断として賃上げは難しい状況です。
経済全体が上向いて、企業の販売価格もすんなり値上げできるというような、楽観的ムードが醸成されない限りは、賃上げの動きは進まないと考えています。