未成年者の相続(民法と相続税法の視点から)
相続に関する法務の決め事は民法に定められています。
一方で、相続税に関する決め事は相続税法に定められています。
相続税法の多くの考え、用語は民法を参考にしています。
しかし、民法と相続税法の考え方が異なる論点もいくつかあります。
今回は、未成年者の相続に焦点をあてて、民法と相続税法の違いなどを解説して行きたいと思います。
民法の考え方
未成年者の相続
相続に限らずですが、未成年者が何か法律行為をするためには、その法定代理人の同意を得なければなりません。(民法第5条)
したがって、相続人の中に未成年者がいる場合には、その親権者が法定代理人となり、遺産分割協議に参加します。
ただし、利益相反行為となるような場合は、親権者は未成年者の法定代理人になることはできません。
例えば父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが相続人になるような場合、母親は未成年の子どもになることはできません。母親が、遺産分割協議をする相手の子どもの代理人をしてしまっては、自分自身と遺産分割協議をすることになってしまい、利益相反になるからです。
親権者が利益相反の関係になってしまい、法定代理人が立てられない場合には、次項の特別代理人の選任を検討します。
特別代理人の選任
特別代理人の選任は、親権者が申立人となり、未成年者の住所地の家庭裁判所に申立書を提出することにより行います。
申立書に、特別代理人の候補者を記入します。
特別代理人は、弁護士などの第三者はもちろん、利益相反関係になければ未成年者の親族(祖父母など)でも構いません。
税務の考え方
未成年者控除
未成年者の相続税について、未成年者控除の検討は重要になります。
相続人が20歳未満の未成年者の場合には、(20歳-年齢)×10万円の、相続税の税額控除を受けることが出来ます。
なお、未成年者本人の税額から税額控除しきれない場合は、未成年者の扶養義務者(親など)の相続税額から控除しきれなかった税額を控除できます。
実務家としてのコメント
親が早くに亡くなったりした場合に、相続人の中に未成年者が存在するケースがあります。
未成年者が存在する場合には、法定代理人もしくは特別代理人の検討をしなければなりません。
ただし、実務上よくある、相続人が妻と未成年の子どもだけというケースでは、基本的に特別代理人の選定が必要となります。
特別代理人の選定は家庭裁判所に申立てを行わなければならず、コストもかかります。
したがって、財産の状況によっては、あえて遺産分割協議を行わず、法定相続分で相続を行うというのも1つの方法です。
遺産分割協議を行わないのならば、特別代理人の選定も必要ありません。
しかし、遺産分割協議を行わない場合には、相続税の配偶者控除、小規模宅地等の特例が基本的には使用できないことになります。
これらの特例が使用できないデメリットと、特別代理人の選定コストを比較して、いずれが有利か、検討する必要があります。
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