無償賃貸の場合の社宅に係る仕入税額控除
社宅建物の消費税の取扱い
ご存知の方も多いかもしれませんが、消費税法においては1,000万円以上の貸付用の住宅は居住用賃貸建物とされ、仕入税額控除が認められません。
昔は、役員や従業員の社宅建物を取得した際には、一括比例配分方式を活用して、社宅建物の消費税を還付するスキームが流行っていました。
ですが、現在は上記の居住用賃貸建物という制度が出来て、社宅建物の消費税還付はブロックされました。
しかし、現在も還付を受ける方法はある
しかし、現在でも社宅建物の消費税を還付する方法があります。
それは、社宅を役員や従業員に無償で貸し付ける方法です。
居住用賃貸建物は、あくまで役員等から有償で社宅賃料を受取り、非課税売上が発生する場合の建物をいいます。
無償で社宅を貸し付ける場合には、そこから非課税売上は発生せず、その社宅は居住用賃貸建物に該当しません。
これは、以下の国税庁の質疑応答事例にも記載されております。
社宅に係る仕入税額控除(国税庁質疑応答事例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/19/10.htm
従いまして、社宅を無償で貸し付ければ、その社宅の取得にかかった消費税の還付を受けることができる可能性があります。
給与課税に注意が必要
しかし、、、税法は上手く出来ていて、メリットばかりではありません。
無償で社宅を貸し付けた場合には、会社が役員や従業員へ経済的利益を与えたとみなして、役員や従業員に給与所得課税が行われます。
経済的利益は、税務上の適正家賃と実際家賃の差額で計算されます。税務上の適正家賃の計算方法は、社宅の広さなどによって様々ですので、税理士にご質問されたほうがよろしいかと思います。
給与所得課税が行われるということはつまり、法人にとっては源泉所得税を徴収して納付する必要が出てきます。役員や従業員個人については、年末調整や確定申告の際に、当該経済的利益を給与として加算して、税金計算を行う必要があります。
従いまして、消費税目的で社宅を無償で貸し付けた場合、所得税で大きなしっぺ返しを食らう可能性があります。上記の国税庁の質疑応答事例には所得税のことまでは丁寧に書いてくれてはいないので、注意が必要です。
ただし、源泉所得税が発生したとしても、消費税の還付額のほうが大きいケースもありうるかと思います。その場合は、源泉所得税は納めつつも、無償で貸し付けたほうが良いというケースもありえます。詳細なシミュレーションが必要になります。
まとめ
社宅建物については消費税還付が受けられないという認識の方が多いかと思いますが、賃料設定を工夫すれば消費税還付が受けられる可能性があることをご説明いたしました。
ただし、消費税還付については税務署も目を光らせる論点になりますので、あくまでもご自身でメリット、デメリットをよく検討されたうえで、税理士にご相談いただくとよいかと思います。
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