インボイス制度について思うこと

 インボイス制度が2023年10月1日から遂に始まります。

 新聞やテレビのCMでも、インボイス対応についての話題が増えてきました

 

 国税庁も以下のような特設サイトを用意して、制度の啓蒙に努めています。

インボイス制度の概要|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm

 

 法人や個人事業者も、制度開始が近づくにつれて段々と自分事として考えるようになり、お客様からインボイス制度のご説明を求められる機会も増えてきました。

 

 このように、インボイス制度の導入に向けて各関係者が色々と頑張っている最中ですが、制度のご説明をお客様に行い、反応を伺ってみると、インボイスの導入は時期尚早な感じを受けるところです。

 

 まず、インボイス制度をご説明するにあたっては、消費税の仕入税額控除のご説明や、免税事業者制度の解説が欠かせません。しかし、現在消費税を申告している事業者の方であっても、なかなかこれらの制度を理解している方はいらっしゃいません。

 さらに、それらの知識の上に、インボイスという新制度の知識を学ぶ必要があるわけです。

 そして、インボイス登録の判断は、税理士が考えて結論が出せるようなものでもなく、取引先との力関係や取引条件によって結論が変わってきますので、事業者の側もよく制度を理解して、税理士と一緒になって判断する必要があります。

 これらの学習、判断の作業は、事業者にとっては大きな負担でしょう。

 

 また、国の制度の周知も十分なものとは言えないと思います。国は色々とパンフレットや動画の作成で啓蒙活動をしておりますが、現時点でもインボイス制度の概要を把握していない方も多くいらっしゃいます。

 

 そもそも、免税制度というものを作ってしまったのが、全ての問題の根幹にあると思っています。

 消費税の前進の売上税というものが、大平、中曽根内閣の時代に話題にあがっていました。中曽根首相は以下の著書で、ヨーロッパ型の消費税制度を導入しようと財務省は要望していたが、日本型の消費税制度とするように要望したとありました。

 その売上税の考えが竹下内閣の消費税導入時も引き継がれ、免税事業者制度などのいわゆる日本型の消費税が出来あがったのだと思います。

 消費税という大型の新たな租税を導入するためには、各界から多くの反発があったのでしょう。それらの反発を調整するかたちで、日本型の消費税が出来上がったのだと推察されます。

 その日本型の消費税をインボイス導入でヨーロッパ型に転換しようというのが今の流れかと思います。

 しかし、日本型の消費税制度に慣れきってしまった日本が、今からヨーロッパ型の消費税にしましょうといっても、抵抗感はかなりのものだと思います。

 実際に、免税事業者制度などを前提に取引を行っていた団体から、インボイス導入反対の声も多く上がっているところです。

 

 国は、今いちど日本国民にインボイスについて十分な説明、理解を得られるような機会を設けるべきではないかと思います。

 十分な理解を得られないまま制度を導入しようとすると、また免税事業者制度のような妥協が生まれ、消費税法がさらに複雑怪奇な制度になってしまうのではないかと、不安が募ります。

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