暗号資産の税務で誤解の多いポイント

 こんにちは!栃木県宇都宮市の公認会計士・税理士の岸です。

 暗号資産への投資、とても流行っていますね。お客様でも暗号資産への投資を行われている方がいらっしゃいます。その中で、暗号資産の税務上の取り扱いがやはり気になるところです。

 今回は、そんな暗号資産の税務上の取り扱いの中でも、誤解が多いポイントを解説していきます。

暗号資産の税務で誤解の多いポイント

 暗号資産の税務上の取り扱いについては、国税庁が分かりやすいFAQをまとめています。何か不明点があったら、こちらを参照すれば多くの問題は解決するかと思います。

 暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(令和3年12月22日) 

 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf

国税庁HPより

 暗号資産の譲渡が雑所得に該当したり、雑所得の損失が他の所得と損益通算できなかったり、翌期に繰り越せないなどは、皆様知識として持たれている方が多いです。

 以下では、それ以外の特にご相談を受けていて誤解が多い事項をQ&A形式でご紹介させていただきます。

Q.マイニング、ステーキングで取得した暗号資産に税金はかかるの?

 A.マイニング、ステーキングで取得した暗号資産については、その取得時点の時価で収益として課税されます。

 マイニングやステーキングでは暗号資産を取得するだけで、お金が入ってきているわけではないのですが、税務上は暗号資産の取得により利益を得たものとして考えます

 なお、この際にマイニングに要した費用は(サーバー代など)は経費として計上することができます。経費を計上できれば利益が下がり、税額も下がりますので、関連する費用は漏らさず集計しておいたほうが良いでしょう。

Q.ある暗号資産を別の暗号資産に交換したのですが税金は発生しないですよね?

 A.暗号資産同士の交換(例:BTC→ETH)であっても、税金が発生するケースがあります。

 ある暗号資産Aを、他の暗号資産Bと交換した場合、税務上は暗号資産Aを一旦譲渡し、そのお金で他の暗号資産Bを購入したものと考えます

 したがって、仮に暗号資産Aの交換時点の時価が、暗号資産Aのの取得時点の価格を上回っていれば、暗号資産Aの譲渡により利益が発生します。その場合は、その利益に対して課税されます。

 暗号資産を交換しただけで特にお金は受け取っておらず、課税されるという認識がない方は多いです。暗号資産の保有ポジション変更のために何度も交換を行うと、手許にお金はないのに税金だけは発生するというケースも起こり得ますので注意が必要です。

Q.暗号資産は申告時点の時価で評価替えを行う必要がありますか?その場合、含み益は利益として課税されてしまいますか?

 A.暗号資産を個人で保有しているか、法人で保有しているかで取り扱いが異なります。

 暗号資産を個人で保有している場合は、年末時点の暗号資産の時価で評価替えを行う必要はありません。実現していない含み益に対して所得税は課税されません

 一方で、暗号資産を法人で保有している場合は、毎期末に期末時点の時価で評価替えを行う必要があります。実現していない含み益が利益として課税されます。売却、実現していなくても含み益に課税されてしまいますので、手許にお金がないのに税金だけ発生するというケースが起こり得ます。暗号資産を多く保有している法人については、納税資金の確保は慎重に行う必要があります。

Q.暗号資産の譲渡には消費税がかかりますか?

 A.国内の暗号資産交換業者(コインチェック、ビットバンクなど)を通じた暗号資産の譲渡には、消費税は課税されません

 国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡には、消費税上は支払手段等の譲渡というものに該当し、消費税は非課税となります。また、原則課税により消費税の申告を行う場合に課税売上割合を算定しますが、支払手段等の譲渡は課税売上割合の算出にあたって、非課税売上に含めて計算する必要はありません。 

 なお、国内の暗号資産交換業者に対して支払う取引手数料に関しては、暗号資産そのものの取引ではなくサービスの提供として消費税が課税されており、課税仕入として集計できます。

Q.海外の取引所(バイナンスなど)で取引をしていますが、海外の取引にも税金がかかるのですか?

 A.海外の取引にも所得税、法人税が課税されます

 日本の所得税、法人税は全世界所得課税という考え方を採用しております。ざっくり説明すると、日本の居住者は日本以外で稼いだ利益に関しても日本で税金を納めてねという考えです。したがって、海外の取引所で暗号資産を譲渡したり、交換したりした場合にも、その取引を漏れなく集計して申告に含める必要があります。

Q.暗号資産の取引を申告しなくても税務署には分からないんじゃないの?

 A.税務署は国内の暗号資産交換業者から情報収集しています。

 現在、国内の暗号資産交換業者は、取引所利用者の取引内容を記載した支払調書という書類を税務署へ提出することが義務付けられています。国内の取引所の取引履歴は、税務署が把握していると考えたほうが良いでしょう。

まとめ

 暗号資産の税務について、特に誤解の多い点を中心にご説明いたしました。課税の対象となる取引を把握し、申告漏れがないように暗号資産の取引を行っていきましょう。

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