未払配当金に係る源泉所得税の納付時期

 こんにちは!栃木県宇都宮市の会計士・税理士の岸です。

 皆様の会社は毎期配当金は支払っていますか?

 個人株主等へ配当金を支払う場合は、配当金額から源泉所得税を源泉徴収して配当金を支払います。源泉徴収した税額は、翌月の10日までに国へ納付します。

 外部の株主が多い会社は、実は株主に相続が発生していて預金口座が凍結されていた、というようなケースもあるかと思います。そのような場合、振込が行えないので未払の配当金が生じるかたちになります。

 では、未払の配当金に係る源泉所得税はいつまでに国へ納付すれば良いのでしょうか。この答えは、所得税法181条第2項に記載されております。

第181条 源泉徴収義務
 居住者に対し国内において第23条第1項(利子所得)に規定する利子等(以下この章において「利子等」という。)又は第24条第1項(配当所得)に規定する配当等(以下この章において「配当等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その利子等又は配当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。

2 配当等(投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除く。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配を除く。)については、支払の確定した日から1年を経過した日までにその支払がされない場合には、その1年を経過した日においてその支払があつたものとみなして、前項の規定を適用する

 支払の確定した日、つまり株主総会で配当決議をした日から1年を経過した日までに配当が支払われない場合、その1年を経過した日にその支払いがあったものとみなして、源泉所得税を国に納付します。

 また、1年を経過した日とはいつか。具体的には以下の通達に定義されています。

所得税基本通達181-5 支払の確定した日から1年を経過した日
 法第181条第2項に規定する「支払の確定した日から1年を経過した日」とは、その支払の確定した日(36-4に定める日をいう。)の属する年の翌年の応当日の翌日をいうことに留意する。

 支払の確定した日の属する年の翌年の応当日の翌日、です。

 令和4年6月10日に株主総会で配当決議があったと仮定します。その場合、令和5年6月11日までに配当が支払われなければ、実際に支払っていなくとも令和5年6月11日に支払があったものとみなして、源泉所得税を納めなさいということです。

 この例ですと、令和5年6月11日に支払があったものみなされるので、源泉所得税の国への納付はその翌月10日である、令和5年7月10日までに行う必要があるということです。

 例えば冒頭の例のように株主に相続が発生したケースですが、支払の確定した日から1年を経過する日よりも前に、相続人が判明するなどして配当金の支払を行うことができた場合には、その支払った日の属する月の翌月10日までに源泉所得税を納付します。一方で、1年経っても配当金が支払えない場合は、1年経過後に配当があったものとみなして、源泉所得税を納付します。

 このように未払の配当金が発生した場合には定期的に配当金の支払い状況を適時確認しておかないと、源泉所得税の納付期限が過ぎてしまい、不納付加算税等のペナルティが発生する場合がありますので注意しましょう。

 以上、簡単にですが、未払配当金に係る源泉所得税の納付時期についてご説明いたしました。

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