相続税の非課税財産

 相続税の計算上は非課税になる財産というものがあります。
 非課税になれば、その財産に対しては相続税がかからないということです。

 国税庁のHPに例示されている主な非課税財産は以下の通りです。

No. 非課税財産
1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
2 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
3 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
4 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
5 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
6 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
7 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 特に、実務上よく見かける項目を解説いたします。

 No.1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物

 先祖代々の墓地や墓石、仏壇などは非課税となります。

 よく言われるのが、亡くなってからお墓を買うよりも、亡くなる前にお墓を買えば、相続税の節税になるということです。
 亡くなってからお墓を買う場合は、亡くなった時点ではお墓はまだ購入していませんので、購入代金は現預金として相続税の対象になってしまいます。
 しかし、亡くなる前にお墓を買えば、亡くなった時点では既にお墓を所有しており、そのお墓は非課税になるため、相続税の対象にはならないことから、節税効果があるということです。

 これを利用して、借入をしたり、まだ購入代金は未払いの状態にして、亡くなる前にお墓を購入したら良いのではないか、と仰っしゃられる方もいらっしゃいます。
 借入金や未払金は相続税の債務控除の対象にもなり、節税効果が大きいのではないか、ということです。
 しかし、この方法はあまり意味のない方法です。なぜならば、お墓などの非課税財産に紐づく借入金などの債務は、債務控除の対象外となるからです。

 また、現預金で多額の金額を相続まで残しておくと相続税が課税されてしまうため、亡くなる前に純金のおりんなどの高価な仏具を購入して、現預金を非課税財産に組み替えるということを提案される方もいらっしゃるようです。
 これは、実際に仏具として使用して、妥当な金額、規模感の仏具なら良いのですが、明らかに節税対策として購入したことが分かるような場合などは、非課税財産ではなく相続税の課税対象として税務調査で指摘される可能性もありますので注意しましょう。

 No.4 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

 被相続人の死亡を原因として受け取ることになる生命保険金については、500万円×法定相続人の数までは非課税となります。
 法定相続人が2人なら、500万円×2人=1,000万円。法定相続人が3人なら、500万円×3人=1,500万円。といった具合です。

 例えば法定相続人が2人の場合、現預金として亡くなるまでに1,000万円置いておくよりも、1,000万円の生命保険金が受け取れる保険に入っておいたほうが相続税の節税になります。

 主な注意点としては、保険証券上の名義人と実際の保険料支払者の関係が挙げられます。
 たまにですが、保険証券上の名義人と、実際の保険料支払者が異なるケースを見受けます。(名義保険といったりします。)
 税務上は、保険証券上の名義人ではなく、実際の保険料支払者を保険の名義人として扱います。
 場合によっては、保険証券上の名義人と実際の保険料支払者が異なると、500万円×法定相続人の非課税枠が適用できない課税関係になってしまうケースがありますので注意しましょう。

 No.5 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分

 被相続人の死亡によって、会社などから支払われる死亡退職金は、500万円×法定相続人の数までは非課税となります。

 死亡によって退職金が支払われるケースはよく見受けますが、退職金の一部が非課税となるのはありがたいことです。
 また、死亡退職金は相続税の方で課税対象となるため、所得税はかかりません。

 さらに、被相続人が非上場株式を保有していた場合には、その非上場株式も相続税の課税対象になります。
 その場合に、当該非上場会社から死亡退職金が支払われた場合には、非上場株式の純資産評価という計算上、死亡退職金を債務として控除することが出来ます。結果として、株価の引き下げ効果があります。
 社内規定の整備などは必要ですが、是非死亡退職金の支給は検討したいところです。

 No.7 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

 これは少し分かりづらいですが、一番分かりやすい例を挙げると、相続した預金で相続人が自治体にふるさと納税をするケースがあります。
 相続した預金はもちろん相続税がかかるのですが、その預金からふるさと納税をした場合は、その納税した金額は相続税の非課税財産となり、相続税がかかりません。
 さらにふるさと納税の場合は、相続人がふるさと納税の寄附金控除を適用することもでき、2度おいしいです。

 他にも、ユニセフや赤十字、国立学校法人への寄附なども、非課税の対象になります。
 なお、寄附はどこでも受け入れてくれるわけではないので、事前に寄附を受け入れてくれる団体かどうか、確認は必須となります。

まとめ

 今回は相続税の非課税財産について解説いたしました。
 生前に財産を組み替えることにより、非課税財産の割合を増やすといった相続対策は有効です。
 生命保険に入るだけで、相続財産が基礎控除以下になるといったケースも見受けます。
 生前に自分の財産を洗い出して、事前対策を行うことが重要です。

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